RVOとは
網膜静脈閉塞症とは
網膜静脈閉塞症(RVO;retinal vein occlusion)は、網膜動静脈交差部で網膜静脈の分枝が閉塞する網膜静脈分枝閉塞症(BRVO;branch retinal vein occlusion)と、視神経内で網膜静脈が閉塞する網膜中心静脈閉塞症(CRVO;central retinal vein occlusion)の二つに分類されます。BRVOでは閉塞静脈よりも遠位側に、CRVOでは網膜の全域あるいは大部分に出血が広がります。なお、RVOでは、主に黄斑浮腫を合併した場合に視力低下が認められます。
血管の位置を見やすく変えています。
網膜静脈閉塞症の疫学と危険因子
世界的な疫学研究では、1,000人あたりの有病率はRVO全体では5.20人、BRVOでは4.42人、CRVOでは0.80人であり、推定患者数はRVO全体で1,640万人、BRVOで1,390万人、CRVOで250万人と報告されています1)。CRVOに比べBRVOの有病率が高く、BRVOの有病率はアジア人とヒスパニックで高い傾向がみられ、BRVO、CRVOともに加齢とともに有病率が高くなることが示されています1)。
日本の久山町研究の1998年の調査結果では、40歳以上の有病率はRVO全体では2.1%、BRVOでは2.0%、CRVOでは0.2%でした2)。さらに、1998年から2007年の9年間の追跡調査による累積発症率は、RVO全体では3.0%、BRVOでは2.7%、CRVOでは0.3%と報告されています3)。
また、RVOは中高年者に多く、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患を罹患していることが多いことが知られています。
1)Rogers S, et al.: Ophthalmology 2010; 117: 313-319.
2)Yasuda M, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci 2010; 51: 3205-3209.
3)Arakawa S, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci 2011; 52: 5905-5909.
網膜静脈閉塞症の病態と症状
BRVOでは主に網膜動静脈交差部に、CRVOでは主に篩状板部またはその後方にそれぞれ血栓が形成されRVOを発症します。閉塞した静脈の内圧は上昇し、血管壁から血液や滲出液が網膜内に貯留します。また、血流量が低下して網膜が虚血、低酸素状態に陥るとVEGFなどのサイトカインが過剰に産生されます。過剰なVEGFにより血管の透過性が亢進し浮腫が生じるとともに、血管新生が生じることがあります。特に虚血型CRVOでは前眼部(虹彩や隅角)に血管新生が生じ、進展すると血管新生緑内障に至る危険性があり、非常に予後が不良です。
RVOでは、出血や浮腫により視力低下や視野欠損、変視症などを自覚しますが、出血や浮腫が消失すると自覚症状は軽減します。しかし浮腫は繰り返し発生することが多く、長期間持続すると細胞の不可逆的な変化により症状が悪化し、視力など視機能の改善は期待できないことが多くなります。