実臨床における取組み

岡山大学病院

岡山大学 医学部 眼科学講座

 岡山大学病院はわが国でも指折りの歴史のある病院で、明治3年に岡山藩医学館として設立されたのがはじまりです。昭和24年に岡山大学医学部附属病院(平成19年に岡山大学病院に改称)となり、眼科を含む12診療科が設置されました。加齢黄斑変性治療は同科が積極的な治療に取り組んでいる疾患の1つで、多くの患者さまにアイリーアによるTreat and Extendを実施しています。
 今回は、同科の細川海音先生に、多くの加齢黄斑変性の患者さまに対して、アイリーアによるTreat and Extendを実施する際のコミュニケーションや院内で工夫していることなどを伺いました。

岡山大学病院眼科における加齢黄斑変性診療の現状

 当科では、月、水曜日に加齢黄斑変性の専門外来を設置しています。1日あたりのスタッフ数は、医師が4~5名、視能訓練士(ORT)、看護師が各5名です。最近は患者さまが非常に多いため、火曜日にも硝子体内注射を行っています。当科の設備は、検査室が視力、造影、光干渉断層計(OCT)、視野検査の4室、診察室が6室、硝子体内注射を行う処置室が1室です。
 加齢黄斑変性で抗VEGF薬を投与される患者さまは、この5年間で約5倍に増加しました。患者さまが年々増加している状況ですので、この間、できるだけスタッフ間での混乱や患者さまの負担を減らせるように、スケジュールや手順に工夫を加えてきました。また、週に3回の硝子体内注射施行日を設けることで、患者さまのご都合にも対応しやすいようにしています。

加齢黄斑変性の病態、治療に関する患者ムンテラ

眼球模型
患者冊子

 患者さまに加齢黄斑変性について説明する際には、まず眼球模型で黄斑の説明をした上で、カラー眼底写真、造影写真などの画像を見てもらいます。反対側の正常な眼の画像と比べることで、病変を理解してもらいやすくなります。
 治療法については、代表的なものとして「抗VEGF薬硝子体内注射」と「光線力学的療法(PDT)」があることを説明し、多くの場合は第一選択として抗VEGF薬を薦めています。
 投与方法については、定期的投与(維持期は2ヵ月毎投与)、Treat and Extend、必要時投与(PRN)の概略を説明しますが、基本的にはTreat and Extendを第一選択として薦めます。患者さまには、「病態が落ち着いたら少しずつ投与間隔をあけながら、治療を続けていきましょう」と説明します。ただ、脳梗塞や心筋梗塞の既往のある患者さまや、90歳を超える高齢の患者さまには、PRNを推奨することもあります。
 初回には患者さまに同意書をお渡し、治療費についても説明します。自宅でお読みいただけるように、患者さま向けの冊子もお渡ししています。また、加齢黄斑変性は反対側の目にも発症することが多いため、「アムスラーチャートを用いて、片目を隠して、片目ずつ見え方をチェックしてください」と自宅での自己チェック法を指導します。

患者同意書(例)

Treat and Extendの実際

当院では、導入期にアイリーアを4週毎に3回投与し、その後も滲出性変化が消失するまでは4週間隔の投与を継続します。滲出性変化が消失した後、Treat and Extendを開始します。滲出所見の有無にかかわらず診察時に計画的にアイリーアを投与し、再発を認めない限り2週ずつ診察および投与の間隔を延長します。最大投与間隔は、治療1年目は12週、治療2年目以降は16週と設定しています。そして、再発を認めた場合は、2週ずつ短縮します(最小投与間隔は4週)。再発後に投与間隔を短縮し、再び滲出性変化が消失した場合でも、その投与間隔を半年間継続します。半年間再発を認めなければ、再び延長を開始することとしています。再発基準は、「新たな網膜出血、OCTによる網膜下もしくは網膜内の滲出性変化」と規定しています。視力は他の因子も関与するため、参考程度にしています。

Treat and Extend レジメン(例)

患者さまの1日のスケジュール

 Treat and Extendの場合、基本的に検査、診察、注射を同日に行っています。
 1日のスケジュールと患者動線を下図に示します。

患者動線:診療室(3)で診療を受けた場合
処置室、使用するセット

 患者さまが来院されたら、まず検査を行います。検査は、視力、眼圧、OCT、場合によってはカラー眼底写真を撮影します。その後に、診察、次回予約、看護師からの説明、硝子体内注射という流れです。なお、事前に投与することがわかっているので、患者さまには前回来院時に処方された抗菌点眼剤を3日前から投与していただいています。硝子体内注射を行う処置室への患者さまの誘導は看護師が行います。処置室にはベッドが1台設置されており、医師、消毒や注射を手伝う看護師が待機しています。1人あたりの施術時間は5分程度です。

 当科では、13時半~、14時半~の2回、硝子体内注射の枠を設けていますが、1日に25~35名の患者さまに注射するため、検査、診察が混み合わないように来院時間をずらしていただくようにしています。午前中に来院された患者さまは、午前中に検査、診察を受け、その後昼食休憩をとり、戻られた後に注射を受けます。在院時間は長くなりますが、外来待合室での待ち時間が長い状態に比べると、途中で休憩をとっていただくことで待つことに対する不満は軽減されるようです。一方、12時半ごろに来院される患者さまの場合、13時に検査・診察、13時半に注射と、在院時間は約2時間となります。

患者さまの1日のスケジュール(例)

スタッフ間の工夫
〜患者さまの増加に伴う混乱を防ぐために〜

 当院における硝子体内注射は、処置室で注射担当医師が連続して施行しており、処置室へのスタッフの出入りは最小限に抑えるようにしています。
 患者さまが増加していますので、スタッフ間の混乱を防ぐために、硝子体内注射を受けられる患者さまには他の患者さまと違う色のファイルを使用し、手順、確認項目が書かれたチェックリストをファイルに添付しています。診察や説明が終わればリストにチェックし、次の手順に回ってもらいます。
 また、患者さま、左右眼、薬剤の間違いが起こらないように注意を払っています。まず、医師の診察後に、看護師が患者さまの手に右または左と書かれたシールを貼ります。ファイルには当日の診察カルテを添付し、注射する前に必ず注射担当医師が確認します。患者さまが処置室に入られたら、本人から名前、左右どちらの目に注射するのかを申告してもらい、医師、看護師が指示書、カルテ、シールを確認後に注射を行います。

カルテに添付するチェックリスト(例) 患者さまの手に貼るシール

Treat and Extendのメリットとデメリット

 Treat and Extendのメリットとしては、予め計画されている投与のため、患者さま、医師ともに予定を立てやすいこと、患者さまごとに適した間隔で投与するため、多くの患者さまがPRNに比べ、連続して黄斑部をドライに保ち視力を維持・改善しやすいということが挙げられます。
 一方でデメリットとしては、患者さまによっては必要のない注射を行っている可能性があること、治療をいつまで続けるのかが明確にわかりにくいことが挙げられます。実際にTreat and Extendを実施していると、個別化かつ計画的投与であるという点で、定期的投与やPRNでの欠点を補う治療法と成り得ること、また、診察時に次回投与日が決定されるため、患者さまも「治療に参加している」という意識が高くなり、治療中に脱落することが少ない治療方法としても有用と考えています。

L.JP.MKT.OP.12.2017.1210

ページの最上部に移動

このサイトは、弊社の医療用医薬品である眼科用VEGF阻害剤を
正しく理解・使用していただくための情報提供サイトです。
医療関係者の皆様に適正使用の推進ならびに安全性に関する情報を提供しております。
ご利用の際は、必ず 注意事項 をお読み下さい。

医療関係者の方へ

こちらは、医療関係者のためのページです。
あなたは医療関係者ですか?