実臨床における取組み

聖隷浜松病院

聖隷浜松病院

 聖隷浜松病院の前身は、昭和34年に開設された聖隷浜松診療所です。昭和37年に新病院(1号館、病床数120床)が完成し、社会福祉法人聖隷保養園聖隷浜松病院の開設が許可され、内科・外科などの8科で発足しました。2015年現在の標榜科は35科、病床数は744床です。
 同病院では、眼科部長の尾花明先生を中心に加齢黄斑変性(AMD)の治療に力を入れており、患者ムンテラ用の説明DVDや電子カルテテンプレートを独自に開発するなどユニークな取り組みが行われております。今回は、尾花先生と眼科スタッフの皆様にお話を伺いました。

聖隷浜松病院におけるAMD診療の現状

診察日AMD専門外来(眼底外来) 月・火曜日の午後
抗VEGF薬の注射     月・火・木・金曜日
(注射を受ける患者数は、1日につき10名が上限)
スタッフ医師4名(診察担当2名、注射担当3名 *1名は兼任)、看護師3名、視能訓練士(ORT)10名、眼科コメディカル(OMA)2名、医療秘書7名
実績2014年抗VEGF薬硝子体内注射件数 1,117件

 当院では月・火曜日にAMD専門外来を設けており、Treat and Extend(T&E)で治療を受けている患者さまは診察と同日に注射を受けることが可能です。必要時投与(PRN)で治療を受けている患者さまには、診察と注射の日が異なりますので、木・金曜日に注射することが多くなります。
 当院は眼科医4名の市中病院であり、専門外来は医師1名で対応しています。予約枠(1日30枠)は溢れることもあり、これが現在の体制で対応できる限界と考えています。

初診から診療までの流れ

  • ●初診は一般外来で診察し、AMDが疑われたら造影検査後に専門外来で確定診断
  • ●オリジナルの説明DVDを用いて、AMDの病態や治療法を患者に説明
  • ●オリジナルの電子カルテテンプレートを用いて、治療スケジュールなどを一括管理

 初診の患者さまはまず、午前中の一般外来を受診していただき、各種検査[視力、眼圧、アムスラー検査、眼底写真、光干渉断層計(OCT)など]を実施します。AMDが疑われた患者さまは、蛍光造影検査を施行したのち、専門外来を受診していただきます。専門外来では造影検査結果を説明した上で、当院オリジナルの説明DVDを見ていただき、AMDの病態・原因・治療法[レーザー光凝固、光線力学的療法(PDT)、抗VEGF療法]の他、抗VEGF薬を用いた治療法[固定投与(維持期は2ヵ月ごとに投与)、T&E、PRNの3種類]の概要、そしてこれらの治療法によって期待できる効果や治療費の概算1)について理解していただきます。患者さまには説明DVD視聴後診察室にお戻りいただき、固定投与、T&E、PRNの3種類をもとに、患者さまの希望を伺いながら治療法を相談します。治療法が決定したら、治療の予約をして終了です。

説明DVDの主な内容
患者さまのスケジュール(例)

 患者さまが選択された治療法は、当院で独自に開発した電子カルテテンプレートに入力されます。電子カルテでは、治療スケジュール、検査・治療の内容、散瞳の実施、患者同意の取得を一括管理することが可能であり、患者さまが選択された治療法が記載された説明同意書を電子カルテからプリントアウトすることも可能です。看護師は、この説明同意書に患者さまのサインをいただいた上で、注射日前後の入浴・抗菌薬の点眼に関する注意や緊急時の連絡先などが記載された指示書を渡します。
 3回目の来院日から、抗VEGF薬を3回連続毎月注射します(導入期)。そして、患者さまがT&Eの治療法を選択された場合、5回目の来院日(導入期3回目の注射)から1ヵ月後の6回目の来院日を予約します。6回目の来院日では、導入期の効果を判定するための診断のみ実施し(注射は実施しない)、そこで“効果あり”と判定された場合には、次回7回目の来院日(導入期3回目の注射から2ヵ月後)からT&Eを開始します。
1)尾花 明. 眼科 2014; 56(10): 1355-63

電子カルテ(入力画面の一部)
予約時に患者さまにお渡しする指示書

当院がPRNからTreat and Extendへ変更した経緯

  • ●過去の経験1:視力低下の要因として、PRNで再発を繰り返すことによる網膜組織構造の障害があげられる
  • ●過去の経験2:再発の要因として、治療不足が考えられる患者さまの存在
  • ●過去の経験3:PRNの同日注射によるスタッフの混乱や別日注射による治療の遅れ
  • ●T&Eによって、再発回数を減らすとともに、治療不足や治療の遅れによる再発と視力低下を防ぎ、スタッフの混乱も排除するため

 当院では、過去2009年3月~2012年12月までPRNを実施していました。2年以上経過観察ができたAMD眼を解析した結果、少ない投与回数で視力が維持できた患者さまは23%で、36%の患者さまは投与を継続しても徐々に視力が低下していきました2)。視力低下を来した患者さまには、再発を頻回に繰り返すことで網膜の不可逆的障害が生じた方と、社会的要因などによる治療不足のために滲出性変化が持続している方がおられましたので、このようなことが起こらないように、T&Eを導入しました。
 また、PRNによる同日注射は、注射することが当日に決まるため、急いで薬剤や機械を準備し、患者さまから同意書を取得しなければならず、スタッフが混乱することがありました。一方、診察と注射を別日に行うPRNでは、患者さまはなるべく注射の日を先送りしようとされ、治療が遅れる可能性があります。T&Eは診察日に注射することが確定しておりますので、スタッフが混乱することもなく、患者さまも注射に対する心の準備ができているので、双方にとって良いことだと思いました。
 これらの経緯から、2014年4月以降は、ほとんどの初診の患者さまにT&Eを推奨しているので、T&Eを選択される患者さまが多いです。ただし、高齢者や全身性の疾患を持つ患者さまは、PRNを選択されることもあります。
2)尾花 明. 日本眼科学会誌 2016; 120(2) 90-100

Treat and Extendの方法、およびメリットとデメリット

  • ●方法:維持期において、再発が認められなければ1ヵ月ごとに投与間隔を延長
  • ●メリット:少ない投与回数で維持できる患者さまを安全に検出できる
  • ●デメリット:ある程度の再発を容認することになりreactiveの要素を含む。スケジュール管理が煩雑

 当院では、導入期3回の治療を終えた後、3回目の投与から1ヵ月後に患者さまに6回目の来院をしていただき、効果を判定します。効果が見られた患者さまでT&Eを選択された方は、さらに1ヵ月後(3回目の投与から2ヵ月後)に7回目の来院の予約を入れていただき、T&Eに入ります。当院におけるT&Eの最長投与間隔は4ヵ月、最短投与間隔は1ヵ月に設定しており、再発の有無はOCTによる網膜下もしくは網膜内の滲出性変化、新たな網膜下出血などで判定しています。延長できる投与間隔の単位を1ヵ月ごとと設定しているのは、1年間の総投与回数が2週間単位で延長するよりも少なくなると考えたからです。ただし、1ヵ月以内に再発する患者さまも実際には存在し、2週間単位で延長する方が良かった症例や、最長の4ヵ月間隔が長すぎたと思われる症例も若干見られます。適切な延長間隔については今後、検討が必要と考えています。

聖隷浜松病院におけるTreat and Extendの例

 このようにT&Eのメリットは、再発が起こる前に診断・治療できることで、長期的治療が必要な患者さまに対しても、多くの場合は再発前に注射しますので、視力の維持が期待できることです。
 一方、T&Eのデメリットとしては、再発間隔が常に一定しているわけではないので、結局いつかは治療前に再発します。例えば、2ヵ月間再発がなかった場合、次の治療は3ヵ月後になりますが、実際は1ヵ月後に再発したということもあります。つまり、reactiveの要素を持つことです。また、再発を繰り返しやすい患者さまは結局2ヵ月前後で治療の繰り返しが必要になる場合が多く、煩雑なスケジュール管理を要するT&Eよりも、2ヵ月ごとの固定投与の方が簡単であることです。現時点で得ている感触では、4ヵ月間隔まで延長できる患者さまは治療を休止しても再発しにくいのではないかと思っています。治療の休止可能例に長期間T&Eを続けることは過剰治療になるので、休止時期についての検討が必要です。
 患者さまに最適な抗VEGF薬治療は、薬理学的効果以外にも、僚眼の状態、患者さまの社会的要因やご本人の見え方に対するニーズと希望などを含めて考える必要があると思います。結局、患者さまひとりひとりの話を聞きながら進めていくことが重要であるといえます。

聖隷浜松病院 AMD診療の実際

眼科受付表

聖隷浜松病院 眼科 スタッフの皆様

●視能訓練士(ORT)の声

 検査室は、視力、眼底カメラ、OCT、視野、眼球運動と5室に分かれており、外来の状況により検査員を配置しています。患者さまの検査から診察・治療の流れは眼科受付票で管理し、スムーズに誘導できるようにしています。患者さまには次に受ける検査室の前でお待ちいただくので、特にOCTの混雑時は誘導係や検査係を分担するなどの工夫もしています。必要な検査は患者さまによって違いますが、全ての検査・診察・注射を受けていただくと、患者さまの在院時間は1時間半~2時間程度になります。
 コメディカルスタッフも、尾花先生の講義や、メーカーの説明会に参加するなどして、AMDやT&Eに関する新しい情報を入手するように努めています。

●看護師の声

 眼科外来の看護師は3名で、1名は手術の担当、残り2名は随時患者さまの案内や説明、処置介助を行っています。AMDと診断された患者さまには、治療法を決定後、看護師が再度治療法などの説明を行い、同意書にサインをいただき、患者さま向け冊子や指示書をお渡しします。注射日には、患者さまが来院された時に注射する眼の上にシールを貼り、検査室に案内します。検査がない場合は、患者さまを処置室に案内して散瞳薬を点眼します。
 T&Eは診察と注射の日が同じですので、患者さまも注射に対する心の準備ができており、特に不安などを感じることは無いようです。看護師の立場からも、スケジュール通りにできて良い治療法だと感じています。

●臨床工学技士(CE)の声

 処置室では、医師、CE、ORTの3名で抗VEGF薬の硝子体内注射を行っています。ORTが患者さまを処置室に誘導した後、患者さまが手術椅子に座られた時点で、医師とCEで患者さまと治療眼を最終確認します。CEは手術椅子や顕微鏡の位置を合わせてから消毒を介助します。この時に、患者さまが不安を感じないように声をかけるよう心がけています。薬剤、消毒液、器具などの必要物品はCEが準備します。
 当院では、1時間あたり約10名の患者さまに注射しますが、他スタッフとの協力によりスムーズに注射を進めることができています。

処置室の配置と眼科セット
L.JP.MKT.OP.12.2017.1212

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