実臨床における取組み

日本赤十字社 長崎原爆病院

日本赤十字社 長崎原爆病院

■日本赤十字社長崎原爆病院のご紹介
○医療スタッフ 眼科医:3名/看護師:2〜3名/視能訓練士(ORT):2名
○患者数 加齢黄斑変性患者:400〜450名/月/1日抗VEGF薬投与人数:20〜25名

 長崎市茂里町にある日本赤十字社長崎原爆病院は、原爆被爆者の治療と健康管理を目的に設立されました。同病院の眼科では、限られたスペースを効率的に使用し、多くの滲出型加齢黄斑変性(AMD)の患者さまを診療されています。今回は、脇山はるみ先生に抗VEGF療法の“Treat and Extend”による治療の実際についてお話を伺いました。

院内フロー

日本赤十字社 長崎原爆病院におけるAMD治療の実際

 当院の眼科に通院されている滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者さまは、毎月400~450名程度です。病型による内訳は、前駆病変が20~30%、萎縮型AMDが10%、滲出型AMDが60~70%となっています。さらに滲出型AMDの内訳をみると、典型AMDが約30%、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)が約60~70%、残りの数パーセントが網膜血管腫状増殖(RAP)です。
 抗VEGF薬投与日(以下、注射日)は、毎週火・木曜日の午後に設けており、1日20~25名の患者さまが来院されます。注射日は、医師3名(診察担当2名、注射担当1名)、看護師2~3名、視能訓練士(ORT)2名のスタッフ体制で診療に臨んでいます。

AMD診療のフロー

初診では、眼圧検査と視力検査の実施後に1回目の診察を行い、病歴と前眼部を確認します。その後、散瞳して光干渉断層計(OCT)検査を実施し、2回目の診察を行います。ここでAMDが疑われた場合、離島など遠方から通院されている患者さまなどには、蛍光造影検査も実施します。これは、離島から長崎市内の当院へ通院されている患者さまは、1回の通院で交通費や宿泊費で数万円の出費が必要であり、また、天候やシーズンによって船の欠航や便数が少なくなることがあるので、検査のためだけに通院するのが難しいからです。近隣からの患者さまの場合、初診時は2回目の診察後に蛍光造影検査の予約をしていただいて終了となります。再診の場合は、視力・眼圧検査後に散瞳し、OCT撮影後に診察という流れになります。

AMD診療のフロー

限られたスペースで効率よく診療するための工夫

診療・治療する眼にシールでマーキング

 当院では注射日の効率的な診療のために、どの患者さまにどの薬剤を注射するのかを前日のうちにリストアップし、投与薬剤と注射セットをあらかじめ用意しています。さらに、注射時の混乱や誤りを予防するため、注射する側の眼の額のあたりに、すぐにはがせるシールでマーキングします。このシールは左右の眼を識別するだけでなく、薬剤によってシールの色を分けることで、投与する薬剤も同時に識別できるようになっています。

患者説明

患者さまの疾患に対する疑問や不安は、十分なムンテラで解消

 当院では、AMD患者さまへのムンテラを、できるだけ丁寧に行うよう心がけています。初診時のムンテラではお話しする内容が多岐にわたり、一回の説明では患者さまの疾患や治療に対する理解が不十分な場合も多く、診察担当の医師の説明後、看護師からも繰り返し説明します。特に、看護師には、医師の説明を聞いたうえで患者さまが抱えている不安や疑問を解消することや、患者さまの理解度を確認してもらうよう、お願いしています。
 ムンテラには製薬メーカーが作成している”AMD患者さま向けパンフレット”を活用し、AMDの概要や検査の種類、治療方法などを説明します。さらに、患者さまのモチベーションを保つためにOCT画像等をモニターに映しながら、①患者さまの眼にどのような変化が起きているのか、②どのような予後が予測されるか、③今後の治療方針についてお伝えし、将来にわたり視力を保つためには継続的な治療が重要であることをしっかりと理解していただくようにしています。

初診時のムンテラは良好なアドヒアランスを保つために不可欠

 当院では、五島などの離島をはじめ、佐世保市など遠方を含む長崎県全域から患者さまが通院されていますが、治療を自己の判断で中断してしまう患者さまの割合は1割未満に留まっています。患者さまの良好なアドヒアランスを保つために欠かせないのは、患者さまに疾患と治療の意義を理解してもらうことだと考えています。
 そのために大切なのは初診時のムンテラです。特に患者さまに確実に伝え、理解していただきたいポイントが2つあります。
 1つ目は“AMDは根治する病気ではないため、自覚症状に変化がなくても治療を続けて病態の進行を抑えることが大切である”と伝えることです。例えば、抗VEGF療法の導入期に関する説明で「まずは3回注射をして様子をみましょう」と伝えると、患者さまのなかには「3回注射したら治る」と勘違いする方がいらっしゃいます。抗VEGF薬による治療では、継続の重要性を強調して説明しています。
 2つ目は“今後の経過予想”を伝えることです。患者さまの多くは、AMDという耳慣れない疾患と診断されて「自分はこれからどうなるのだろう…」という不安を抱えることになります。そこで、最初にAMDは治療をしなければ半年ほどで視力が大きく低下し、一度ダメージを受けた網膜は元に戻らないことを伝えますが、治療の継続により現在の視力が維持できる可能性があることを説明し、ここでも治療継続の大切さを強調しています。

患者さまの通院圏域
投与レジメン

抗VEGF薬の投与間隔は病型ごとに決定・調節

 脈絡膜新生血管(CNV)が中心窩を含むAMDの治療方針は病型によって決定しますが、現在、第一選択はすべて抗VEGF薬による単独治療です。PCVでポリープ状病巣の消失が認められない場合には、光線力学的療法(PDT)を併用します。
 抗VEGF薬の選択は、患者さまの年齢や現病歴・既往歴・眼底の状態(CNV typeや大きさ、RPE委縮の程度や脈絡膜厚など)により決定します。抗VEGF薬の病型別投与方法は下図の通りです。

抗VEGF薬の病型別Treat and Extend の投与方法

 なお、Treat and Extendを実施している症例のうち、再発を繰り返す症例については定期的投与を組み合わせます。Dry macula もしくは最大効果を維持できる最大投与間隔を見極めるまではTreat and Extendを実施し、その後はその最長投与間隔で定期的投与を継続するという調節方法です。例えば8週間に延長するとDryが維持できないが、7週間だとDryを維持できる患者さまの場合は、7週間ごとの投与間隔を維持したまま半年程度、定期的投与を継続します。

Treat and Extendは、患者さまの負担を軽減できる投与方法

 当院には離島から1日がかり、場合によっては宿泊を伴い数日かけて通われる患者さまがいらっしゃいます。Treat and Extendによる来院・投与間隔の調節により、来院回数を減らし、その間隔が少しでも長くなることで、患者さまの通院にかかる時間や費用の負担を軽減することができます。また、必要時投与(PRN)のように検査結果によって当日注射をするか否かの判断を患者さまも気にせずに済むことから、患者さまの精神的負担軽減にも役立っています。さらに、抗VEGF薬の過剰投与や投与不足を防ぐことによって、患者さまの全身状態や予後を良好に保つためにもよい選択肢のひとつであると考えます。

L.JP.MKT.OP.03.2018.1278

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