実臨床における取組み

高崎佐藤眼科

高崎佐藤眼科

■高崎佐藤眼科のご紹介

 高崎佐藤眼科は、「大学病院の診療を身近に快適に。」をコンセプトに2016年5月、群馬県高崎市に開院しました。加齢黄斑変性(AMD)を初めとする高度な眼科医療を提供するため最新の設備を導入しているだけでなく、患者さんのストレスになる待ち時間を短くするためのさまざまな工夫を随所に施しています。また、AMD治療の抗VEGF療法においては、群馬大学での経験を踏まえて、Treat and Extendによる治療に取り組んでいます。今回は、同院院長の佐藤拓先生にお話を伺いました。

院内フロー

高崎佐藤眼科におけるAMD診療の実際

 当院では、いつでも気軽に受診できるようにするため、専門外来日や注射日を設けず、紹介状も求めていません。これは、「仕事や家の都合で、平日はなかなか受診できない」、「急変して早く診てもらいたいけれど、次の専門外来日まで待たなくてはならない」、「紹介状がない」といった理由で受診できない患者さんを少しでも減らすためです。来院されたら、他院から転院し治療継続している患者さんも含めて、初診時にはまず、無散瞳で視力検査、屈折検査を行います。その後、眼底検査や光干渉断層計(OCT)検査が必要な患者さんについては、散瞳後にこれらの検査を実施し、その後、診察を行います。ここまでのフローは再診の患者さんでも共通です。初診の患者さんはこれらに加え、サブタイプを明確に分類・診断することを目的に、次回受診時に蛍光造影検査を実施しています(下図)。患者さんはAMDと一生付き合うことになるので、ご自身の眼のサブタイプについてしっかりと理解していただいたうえで、治療を開始することとなります。

院内フローおよび実施場所

患者さんのストレスと院内滞在時間を減らすための工夫

 AMD診療では必要な検査の種類が多く、診療時間や待ち時間が長くなりがちで、それが患者さんのストレスになっています。そこで当院では、移動距離と待ち時間を短くするために、散瞳後に行うOCT検査、眼底写真撮影、眼底自発蛍光検査は一体型の検査機器を採用し、同時に複数の検査を実施できるようにしました。この一体型の検査機器は、医療従事者側にとっても眼底写真の撮り忘れがなくなるというメリットもあります。また、注射室には陽圧式空気清浄機を導入し、診察室の並びに設置しました。診察室からの移動を最小限にし、安全性も確保できることから、患者さんだけではなく医療スタッフの負担も軽減できました。そのほか、待ち時間を予想できるように、待合室には無散瞳で行う検査までの順番を、中待合には診察までの順番を、それぞれ電光掲示板で掲示するようにしました。

患者説明

「結果の見える化」:画像を一緒に見て治療効果を実感してもらうことが
アドヒアランス向上のポイント

画像検査の結果を提示するモニター

 これまでの診療では、検査の結果は医師だけが見ていたため、出血や浮腫など自覚症状が少ない症状に対する治療効果について、患者さんは実感しづらかったのではないかと考えています。そこで当院では画像検査の結果を可動式のモニターに映し出し、患者さんや付き添いの方にも一緒に見ていただきながら、「出血が減ったね」、「むくみが減ったね」と治療効果を確認していただけるようにしました。すると、たとえ視力の向上という自覚症状の改善がみられなくても、画像上での改善を認めることで、患者さんに治療効果を実感していただけるようになりました。このような「結果の見える化」により治療のたびに治療効果を確認し、治療継続の意義を患者さんに納得していただくことの積み重ねとなり、治療に対するモチベーションおよびアドヒアランスの維持・向上につながると考えています。

抗VEGF療法はビジュアル化して説明

 当院におけるムンテラでは、治療のポイントを医師が説明した後、同意書に沿った補完的な説明を看護師が担当しています。医師は限られた短い時間のなかで、患者さんに分かりやすく治療のポイントを説明していかなければなりません。

同意書
AMDの自然経過と治療した場合の経過を示した図

そこで活用しているのが、AMDの自然経過と治療した場合の経過が分かりやすくグラフ化されている右図です。私の場合、まずこの図を用いて、治療を継続することの意義を説明します。さらに、当院では新規に抗VEGF療法を行う患者さんに対して、模式図を用いて投与法を説明しています。導入期については「1ヵ月ごとに1回、連続3回投与」と説明すれば理解を得られるのですが、維持期における投与間隔の調節については言葉のみでの説明では理解を得ることが難しいため、模式図を示して患者さんの理解を促すようにしています。

Treat and Extendについて

Treat and Extendを採用した理由

 当院における抗VEGF療法では、これまでに必要時投与(pro re nata:PRN)を実施して視力が保たれている一部の患者さんを除き、Treat and Extendを採用しています。より長期にわたり良好な視力を維持するためには、長期に視力が維持できない1)というデータが多数報告されているPRNよりも、再発を予防し、網膜へのダメージを最小限にすることができるTreat and Extendがよいと考えるからです。
 なお、PRNで重要なことは、滲出性変化が認められた場合、その部位が中心窩周囲であっても、早急に抗VEGF薬を投与し、視力を維持することです。留学していたVitreous Retina Macula Consultants of New Yorkでは、中心窩周囲で生じた滲出性変化はいずれ中心窩に及ぶため、滲出性変化を認めた場合には必ず抗VEGF薬を投与すべきであると教えられました
 患者さんには、「AMDは慢性疾患で今は治せませんが、治療により症状を抑え続けることに意味があります。Treat and Extendは再発予防の治療です。」とお話しし、納得して治療を受けていただいています。

1)Martin DF, et al.:Ophthalmology. 2012;119(7):1388-1398

※日本における中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対するアイリーアの承認されている用法・用量は、「アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、2ヵ月ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以上あけること。」です。

Treat and Extendのメリットとデメリット

 Treat and Extendの最大のメリットは、再発予防により長期間にわたる視力の維持が期待できる点ですが、来院した際に硝子体内注射を実施することがあらかじめ分かっていることもメリットとなっています。注射はできるだけ受けないで済ませたいと思っている患者さんもいらっしゃると思いますが、そのような患者さんもTreat and Extendについて理解されているので、「打っておきましょう。次回は○週ですね。」「分かったよ」といったやり取りでスムーズに注射を実施できます。これは患者さんだけでなく医療スタッフ側にとっても負担軽減につながります。
 Treat and Extendのデメリットとしては、初診から1年間の通院回数が最低でも7回に及ぶため、患者さんに通院の身体的・金銭的負担がかかること、また、来院時に毎回硝子体内注射を行うため、その都度、眼内炎のリスクが生じることだと考えています。

あらかじめTreat and Extendの投与方法を説明しているためスムーズに注射を実施できます
投与レジメン

Treat and Extendの投与間隔の調節方針

 当院では、AMDのサブタイプにかかわらず、Treat and Extendの導入期には抗VEGF薬を1ヵ月ごとに1回、連続3回投与します。維持期の投与間隔の延長・短縮は2週間ずつ行い、最短の投与間隔は4週間、最長の投与間隔は12週間です(下図)。

高崎佐藤眼科でのTreat and Extend方針

日本における中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対するアイリーアの承認されている用法・用量は、「アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、2ヵ月ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以上あけること。」です。

 投与間隔の延長・短縮の判断は、基本的には①眼底写真による出血の有無、②OCT検査による網膜下液と網膜浮腫で行い、症例によっては③色素上皮剥離(pigment epithelial detachment:PED)を加えた3点によって行います。PEDは、拡大がみられる場合は滲出ととらえますが、変化がみられない時期は4週間投与を続けることはせず投与間隔の延長を考慮します。
 なお、網膜血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation:RAP)の症例では、投与間隔を12週間に延長しても、4週間ごとに定期検診を行っています。
その理由として、RAPでは治療眼の僚眼にも2年以内に56%、3年以内に100%の確率でRAPが発症することがGrossらの検討で明らかになっており2)、12週間ごとの受診では僚眼にRAPが発症した際に治療が遅れるおそれがあるためです。RAP以外の典型AMD、ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy:PCV)では硝子体内注射を受けるタイミングにあわせて定期検診をしています。
 当院では導入期の抗VEGF薬投与が終了した1ヵ月後に蛍光造影検査を実施し、薬剤の反応性を確認しています。検査の結果、無反応と判断された場合には光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)の併用を検討します。このように当院では、それぞれの患者さんに適した治療法を選択し、患者さんの視力予後を良好に維持できるよう心がけています。

2)Gross NE, et al.:Retina. 2005;25(6):713-718

リスクマネジメント

抗VEGF薬の硝子体内注射に対するリスクマネジメント

注射眼を示すシール

 抗VEGF薬の硝子体内注射実施時の安全性確保のために実施していることは大きく2つあります。1つ目は注射眼および投与薬剤の取り違えを避けるためのトリプルチェック体制です。まず看護師が注射眼と投与薬剤を記載したシールを患者さんの洋服の胸元に貼ります。その後、注射室で医師がカルテの内容とシールを確認し、さらに患者さん自身に注射眼はどちらかを言っていただいています。
 2つ目は眼内炎に対するリスクマネジメントです。感染症予防のため、外来治療室(硝子体注射室)をオペ室専用の壁面および床にして、オペ室専用空気清浄機を陽圧にして導入し、室内が常にクリーンな環境に保たれるようにしています。

蛍光造影検査に対するリスクマネジメント

マニュアル

 AMD診療において、AMDのサブタイプを明確に診断してから治療を開始することは非常に重要です。そのために蛍光造影検査は不可欠ですが、同検査には造影剤によるアナフィラキシーといった重篤な副作用の発現リスクが伴います。
 このリスク対策として、まず患者さんのかかりつけ医に連絡をとり、患者さんの病態を確認してから検査を行います。さらに当院では、循環器病院に近接した場所に開業して、重篤な副作用などが発現した場合に循環器病院まで数分で患者さんを運び入れられるようにして安全性を確保しています。連携先である循環器病院とは連携体制を構築し、非常時にはともに患者さんの救命処置にあたる体制を得ることができました。非常時のマニュアルや救急用設備・器具も循環器専門医や麻酔科専門医に指導していただいて整備し、スタッフ間で共有しています。

救急搬送用の設備・救急セット
PP-EYL-JP-0089-06-09

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