アイリーア処方医向けガイド

九州大学病院

九州大学病院

■九州大学病院のご紹介

 九州大学病院は、西日本地域の中核病院、国立大学病院として、災害医療、救急医療など、あらゆる医療の要請に応えていくことを使命と考え、診療、研究、教育に取り組み、最先端の医療を追求しています。同病院の眼科では、加齢黄斑変性(AMD)、網膜色素変性などを含めた網膜硝子体疾患をはじめ、ぶどう膜炎、眼部腫瘍などの診療に注力しています。今回は九州大学大学院医学研究院眼科学分野特任准教授の大島裕司先生にお話を伺いました。

院内フロー

九州大学病院におけるAMD診療体制

 当院の眼科は、紹介受診を基本としており、九州地方のみならず西日本各地から患者さんが紹介されてきます。初診は週に3日(月・水・金)で、AMDが疑われる場合は、AMD専門医が確定診断し、治療方針を決定します。AMDと診断された患者さんの再診は毎週木曜日のAMD専門外来(AMD再来)で行っています。AMD再来を受診される患者さんは毎月約700名に上り、医師9名、看護師5名、視能訓練士(ORT)11名、クラーク(秘書を含む)5名のスタッフ体制で診療を行っています。私はAMD診療に携わるスタッフ全員に向けて、AMD再来の前日(毎週水曜日)に、予約患者数、診療内容(診察のみ、抗VEGF薬投与、治験など)、役割分担などを記載したメールを送信し、情報共有と事前準備を促すようにしています。

AMD再来の診療フロー

 AMD再来では、視力検査後に散瞳し、眼底カメラ撮影を行い、必要に応じて光干渉断層計(OCT)検査、蛍光眼底造影検査を行っており、これらの検査はすべてORTが担当しています。その後、医師が診察を行い、OCT検査や蛍光眼底造影検査の結果をみながら、患者さんと話し合って治療方針(抗VEGF薬の投与間隔など)を決めています。治療開始後、抗VEGF薬を必要時(pro re nata:PRN)投与している患者さんで投与不要の場合は、次回の予約を入れて終了となります。一方、当日に抗VEGF薬の投与が必要な患者さんに対しては、注射前診察を行い、異常所見の有無の再確認、治療眼(右または左)の把握、注射薬の処方、患者さんへの再説明を行います。その後、処置室で抗VEGF薬を投与し、次回の予約を入れて、終了となります(図1)。

AMD再来の院内フローおよび実施場所

さまざまな工夫によって診療効率がアップ

 AMD再来では、抗VEGF薬の投与は処置室で行いますが(図2)、カルテ処置台の上に使用する薬剤、注射指示箋などを置き(図3)、左眼用、右眼用準備台のそれぞれに受水器、滅菌手袋、点眼薬などをセットしておきます(図4)。また、患者さんの取り違えを防ぐために、受診票と指示箋で確認しています(図5)。処置室前で待機している患者さんの名前、薬剤などは事前に確認済みで、処置が終わった患者さんが退室されるのと入れ替わりに次の患者さんを処置室に案内しており、その際には「○○さん、右眼のアイリーアです」などと声をかけています。処置室のベッドで患者さんの準備が整い次第、速やかに処置を行います。こうした取り組みによって、抗VEGF薬の投与にかかる時間が大幅に短縮され、以前は1日に30名程度であったのが、最近では多い日には1日に100名以上の患者さんに投与を行うことができています。

さまざまな工夫によって診療効率がアップ
患者説明

患者説明用資材を活用して十分に説明

 AMD再来を受診する患者さんは、紹介元の眼科や当院初診の際にAMDの病態や治療などについて説明を受けていますが、患者さんの理解が不十分なことも少なくありません。そのため、AMD再来の初回受診時には、AMDの病態や治療などについて解説したDVDをご覧いただき、不明点などについて医師が補足説明しています。ムンテラにはAMD患者説明用資材を活用し(図6)、AMDの疾患概要、検査の種類、治療法などをわかりやすく伝えるように心がけています。

治療継続におけるムンテラの重要性

治療継続におけるムンテラの重要性

 ムンテラの際には、その患者さんの眼底写真やOCT画像などを一緒に見ながら、治療法、治療継続の重要性などについて説明するようにしています。また、AMDの発症、進行には太陽光や喫煙なども関与していることを説明し、喫煙者には治療継続の重要性について伝えるとともに禁煙も勧めています。患者さんのなかには治療によって完治すると誤解している方も見受けられるため、AMDは完治する疾患ではなく、進行を遅らせることを目標とする疾患であること、現在は抗VEGF薬療法という有用性の高い治療法があり、視力の改善と改善した視力の長期維持が期待できること、そのためには抗VEGF薬による治療の継続が重要であることを強調しています。抗VEGF薬による治療の維持期の投与方法には、定期的投与、PRN投与、Treat and Extendという3つの選択肢がありますが、当院では患者さんにTreat and Extendを勧めています。患者さんには「以前は最初に3回注射したら経過観察し、悪化したら再び注射する方法で治療を行っていましたが、網膜はいったんダメージを受けると元には戻らないので、多くの患者さんが治療前よりも視力を落としてしまっていました」などとPRN投与の課題について説明し、続けて「最初に3回投与したら、その後は来院時の検査結果に応じて、次回の投与間隔を2週間ずつ延長あるいは短縮する投与方法で治療を行おうと考えています。この方法による治療を続けることで、長期にわたる視力の維持が期待でき、眼の状態が安定している場合は来院回数を減らすこともできます」などとお話しするようにしています。患者さんに治療を継続してもらうためにも、再発前に抗VEGF薬を投与するプロアクティブ投与の有用性について治療開始前から十分に説明することが重要です。また、経済的な問題による治療中断を避けるために、治療費についても最初にお話しし、高額療養費制度に関する情報を提供することも大切だと思います。

投与レジメン

Treat and Extendの投与間隔は2週間単位で調節

 当院では、維持期における抗VEGF薬の投与方法として、Treat and Extendを患者さんに勧めており、投与間隔の延長・短縮は2週間単位で行っています(図7)。投与間隔の延長・短縮の判断は、新たな網膜出血、滲出性変化の有無によって行います。具体的には、導入期の3回の注射が終わってから1ヵ月後(治療開始から3ヵ月目)にFA/ICGAを施行し、滲出性変化などが認められた場合(Wet)は抗VEGF薬を投与し、認められなかった場合(Dry)は投与せず、患者さんには「今日は注射しませんが、来月は良くても悪くても注射します」と説明し、1ヵ月後の来院時(治療開始から4ヵ月目)にはDryであっても投与します。その後も来院時の検査結果を考慮して2週間単位で投与間隔を調節しています。なお、Treat and Extendを実施している患者さんで、投与間隔を2.5ヵ月にすると再発を繰り返す場合は2ヵ月に1回の定期的投与への変更を勧めています。

Treat and Extendの投与間隔は2週間単位で調節

維持期の患者さんの治療継続へのモチベーションを高めるために

 Treat and Extendの最長投与間隔は3ヵ月という施設が多いと思いますが、当院では4ヵ月まで延長しています。患者さんのなかにはTreat and Extendを長期にわたり継続することに対して、不安やストレスを感じている方も見受けられます。維持期の患者さんの治療継続へのモチベーションを高めるための一案として、当院では4ヵ月に1回の注射で連続3回、つまり1年間再発が認められなかった場合は、いったん治療を中止してみることも選択肢として患者さんに提示しています。治療を中止することができた患者さんには「こちらの指示どおりに通院していただき、4ヵ月に1回の注射で3回クリアできましたね」などとねぎらい、「今日は注射しなくてもよいのですが、どうされますか」と問いかけています。なかには、「再発が心配だから治療を続けてほしい」という患者さんもおられますが、ほとんどの患者さんがいったん治療中止を選択されます。治療中止を選択された患者さんには「その代わり、定期的に眼の状態を確認させてくださいね」と伝え、モニタリングに来院してもらっています。来院時の検査で再発が認められなければ「再発がありませんでしたね。すごいですね」などと声をかけ、フォローアップを続けています。

日本における中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対するアイリーアの承認されている用法・用量は、「アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、2ヵ月ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以上あけること。」です。

今後の課題と展望

治療を中止した患者さんの再発後の投与間隔を検討中

 いったん治療を中止した患者さんでは、治療中止から1年程度で再発している方も散見されますが、その際にはどの程度の投与間隔に戻すのがよいのか悩ましいところです。最終の投与間隔から2週短縮して3.5ヵ月では治療不十分となる患者さんもおられますが、1ヵ月間隔まで戻すと患者さんの負担が増え、治療へのモチベーションにも影響する可能性がありますので、病態を慎重に観察して大きな出血などが認められない場合は投与間隔を2ヵ月程度に戻し、再発がない場合は2週間ずつではなく、1ヵ月単位で延長してもよいのではないかと考え、検討中です。今後はそうしたデータを蓄積し、病態ごとに再発後の治療間隔の目安が提示できればと考えています。

ロービジョンケア専門外来の開設が今後の課題

 AMDでは、視力低下や中心暗点などの症状によって、日常生活に支障を来たしてしまう患者さんも見受けられ、特に両眼性の患者さんでは状況は深刻です。そうした患者さんにはロービジョンケアがQOL改善の一助になると思いますが、当院ではロービジョンケアの資格を有する医師が少なく、実施できていないのが現状です。将来的にはロービジョンケアの専門外来を立ち上げ、周辺視機能を活用するためのアドバイスなどを積極的に行いたいと考えています。

L.JP.MKT.OP.06.2017.1021

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