アイリーア治療戦略

 

アフリベルセプト(アイリーア)の大規模臨床試験で得られた知見と実臨床での応用

坂本 泰二 先生(鹿児島大学医学部 眼科学教室 教授)

DME治療における抗VEGF薬の有用性:エビデンスとリアルワールド

実臨床の治療を考える際、個々の症例を見るのは重要であるが、それは一般化できるものではない。エビデンスレベルの高い、つまり無作為化比較対照試験(RCT)の結果を踏まえる必要がある。糖尿病黄斑浮腫(DME)において、大規模なRCTによって、かつてのゴールドスタンダードであったレーザー治療に対してアイリーアの優越性が検証された(図11)。また、レーザー治療と抗VEGF薬を併用しても視力改善の上乗せ効果はなく、投与回数の低減も示されていない2-5)
一方、比較的均質な患者集団を対象とする臨床試験に比べて、実臨床で遭遇するDME患者の背景は様々である。また、厳格な投与プロトコール、モニタリングを実施する臨床試験と、実臨床の環境は異なる。2015年に日本で行われた調査によると、すでに網膜専門医の70%以上は、びまん性のDMEには抗VEGF薬を第一選択としているが、様々な背景を持つ患者が対象となる日常の診療に、臨床試験で得られた知見をどのように活かすかが課題となっている6)
RCTで確認された有効性および安全性が、期待通りに実臨床で発揮されるかどうかを含めて、今後出てくるリアルワールドデータにも注目し、実臨床における治療を見直す必要もあると考えられる。

図1
目 的:
中心窩に及ぶ糖尿病黄斑浮腫(DME)を有する患者を対象に、アイリーアの有効性について黄斑レーザー光凝固術に対する優越性を検証するとともに、安全性についても検討すること。
試験デザイン:
無作為化二重遮蔽比較対照試験
対 象:
DME患者406例(うち日本人77例)
方 法:
対象患者をアイリーア2mg 4週ごと投与群、アイリーア2mg 8週ごと投与群(4週ごとに5回投与後、24週目以降は8週ごとに投与)、レーザー治療群の3群に割り付けた。
評価項目:
主要評価項目:52週目における最高矯正視力(BCVA)文字数のベースラインからの変化量
副次的評価項目:①52週目にベースラインから10文字以上の視力改善がみられた患者の割合、②52週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合、③52週目におけるETDRS糖尿病網膜症の重症度スコアが2段階以上低下した患者の割合、④52週目における中心網膜厚のベースラインからの変化量、⑤52週目におけるNEI VFQ-25「近見視力による行動」サブスケールスコアのベースラインからの変化量、⑥52週目におけるNEI VFQ-25「遠見視力による行動」サブスケールスコアのベースラインからの変化量
解析計画:
検証的な解析/主要評価項目(FAS):アイリーア投与群のレーザー治療群に対する優越性の検証(両側有意水準2.5%)
副次的評価項目(FAS):同上。ただし、検定の多重性を考慮し、主要評価項目で優越性が示された場合に限り、事前に定めた順序(①から昇順)に従い検定を行う。
安全性:
本試験を含むDMEを有する患者を対象として国内外で実施された第Ⅲ相試験〔3試験の併合解析(1年間)〕において、730例中276例(37.8%)に副作用が認められた。主な副作用は、結膜出血178例(24.4%)、眼痛51例(7.0%)、硝子体浮遊物33例(4.5%)であった。
本試験(52週間)において、試験薬に関連する試験眼の重篤な有害事象は認められなかった。試験薬に関連する全身性の重篤な有害事象はアイリーア4週ごと投与群1例(0.8%)[虚血性脳卒中]、アイリーア8週ごと投与群1例(0.8%)[高血圧性心疾患※2]、レーザー治療群1例(0.8%)[腸炎]に認められた。試験薬に関連する投与中止に至った有害事象はアイリーア8週ごと投与群で腎機能障害が1例、レーザー治療群で腸炎が1例に認められた。

※1 最終評価スコア外挿法(last observation carried forward):欠測値は直前の測定値を用いて補完した。なお、追加治療後の測定値は打ち切りとし、追加治療を受ける直前の測定値により補完した。
※2 高血圧性心疾患は死亡に至る有害事象であった。

効能追加承認時評価資料

DMEに対する抗VEGF治療の特徴と早期投与の重要性

DMEに対する抗VEGF治療では、最大限の視力改善に達するまでに時間を要することが報告されている7)。アイリーアでは、VIVID-DME試験において、52週目の改善文字数の80%を達成する患者の割合は、継続投与することで経時的に増加したことが示されている1)。また、DMEの抗VEGF治療では、投与初期の反応が小さい患者は少ないものの、長期的に投与を継続することで視力改善が得られるDelayed responderが存在する8,9)。Delayed responderには投与開始前の網膜の肥厚が比較的小さい患者が多い。さらに、DMEでは抗VEGF治療1年目に十分な投与を行い視力が改善すると、2年目以降は少ない投与回数でも改善した視力の維持を期待できることも特徴的である10-12)
一方、視力予後に最も影響する因子は投与開始前の視力であり、投与が遅れると期待通りの視力改善が得られない可能性が示されている13-15)。実臨床では様々な理由により投与のタイミングは遅れることもあるが、良好な視力予後を得るためには早期から十分な投与を行うことが重要であると考えられる。

アイリーアによるDME治療

アイリーアはVEGFファミリー阻害作用(特にVEGF-A、PlGF)16)、VEGF-Aとの優れた結合親和性16)、効果持続性17,18)を示し、DME治療における第一選択薬の一つと位置づけられる。前述のように、DMEに対する抗VEGF治療では初期投与が長期の視力予後に大きな影響を及ぼすことから、滲出型加齢黄斑変性(AMD)のようなloading doseを考慮する必要がある。アイリーアの第Ⅱ相(DA VINCI)19)および第Ⅲ相(VIVID-DME1)、VISTA-DME20))試験の結果より、投与初期は1ヵ月ごと投与によって一定の視力改善が得られると考えられる。そして、その後は2ヵ月ごと投与など、投与回数を低減しても改善した視力を維持できることが期待できる。

アイリーアの安全性

アイリーアの安全性に関しては、2016年に包括的なレビュー論文が報告された(図221)。本報告は、滲出型AMD、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)あるいは網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に伴う黄斑浮腫、およびDME患者を対象とした10本のアイリーアの大規模臨床試験、全体として4203例を対象としている。主な有害事象発現率を100リスク人年あたりのイベント数(PYR)および対照群に対するアイリーア群のリスク比[RR(95%信頼区間:CI)]で検討した結果、眼内炎症がアイリーア群2.06、対照群2.37[RR0.87(0.61-1.27)]、眼内炎がそれぞれ0.22、0.52[RR0.42(0.18-1.03)]、重篤な有害事象が20.80、23.09[RR0.90(0.80-1.02)]、創傷治癒合併症が0.15、0.17[RR0.85(0.24-3.86)]、高血圧が11.27、14.87[RR0.76(0.65-0.89)]、APTC※1定義による動脈血栓塞栓事象※2が2.19、2.04[RR1.07(0.73-1.61)]であった。また、全死亡率はそれぞれ1.49、1.16[RR1.28(0.80-2.15)]であった。本解析結果からは、アイリーアの忍容性は良好であると考えられる。
個々の患者には様々な背景があり、決して画一的ではなく、それぞれに最適な治療を決定しなくてはならない。その際には、DMEに関する最新の知識と考察は、重要な判断材料となるであろう。

※1 Anti-Platelet Trialists' Collaboration
※2 非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血管死

図2
目 的:
アイリーアの眼および全身性の安全性について検討する。
対 象:
滲出型AMD、CRVOあるいはBRVOに伴う黄斑浮腫、およびDME患者を対象とした10本のアイリーアの第Ⅱ相および第Ⅲ相試験(全体で4203例)
方 法:
10試験の包括的レビューを実施し、対照群に対するアイリーア群の有害事象発現率を検討した。
評価項目:
眼内炎症、眼内炎、重篤な有害事象、創傷治癒合併症、高血圧、APTC定義による動脈血栓塞栓事象(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血管死)および全死亡
解析計画:
有害事象発現率は、人年法を用いてイベント数/100リスク人年(PYR)として算出した。リスク比は、アイリーア群の有害事象発現率を対照群の有害事象発現率で除して算出した。

※ただし、APTC定義による動脈血栓塞栓事象の解析は、第Ⅲ相試験のみを対象とした。

Reprinted from Ophthalmology., 123(7), Kitchens JW et al, Comprehensive Review of Ocular and Systemic Safety Events with Intravitreal Aflibercept Injection in Randomized Controlled Trials., 1511-20, Copyright©2016, with permission from the American Academy of Ophthalmology.

1)効能追加承認時評価資料
2)Payne JF, et al.: Ophthalmology. 2017; 124: 74-81
3)Brown DM, et al.: Ophthalmology. 2018; 125: 683-90
4)Mitchell P, et al.: Ophthalmology. 2011; 118: 615-25
5)Ishibashi T, et al.: Ophthalmology. 2015; 122: 1402-15
6)Ogura Y, et al.: Jpn J Ophthalmol. 2017; 61: 43-50
7)Ziemssen F, et al.: Int J Retin Vitr. 2016; 2: 16
8)Pieramici DJ, et al.: Ophthalmology Retina 2018; 2:558-66
9)Pieramici DJ, et al. Ophthalmology. 2016; 123: 1345-50
10)Schmidt-Erfurth U, et al.: Ophthalmology. 2014; 121: 1045–53
11)Wells JA, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 1351-9
12)Elman MJ, et al. Ophthalmology. 2015; 122: 375-81
13)Heier JS, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 2376-85
14)Sophie R, et al. Ophthalmology. 2015;122: 1395-401
15)Boyer DS, et al. Ophthalmology. 2015;122: 2504-13
16)Papadopoulos N, et al.: Angiogenesis. 2012; 15: 171-85
17)Stewart MW, et al.: Br J Ophthalmol. 2008; 92: 667-8
18)Niwa Y et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci. 2015; 56: 6501-5
19)効能追加承認時評価資料
20)効能追加承認時評価資料
21)Kitchens JW, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 1511-20

PP-EYL-JP-0094-11-09

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