アイリーア治療戦略

 

DMEの病態と診断、VEGFとは

監修・症例提示 吉田茂生先生
DMEの病態

【図1】DMEの発症機序と治療のイメージ図

DMEの発症機序と治療のイメージ図

資料提供:九州大学大学院医学研究院 眼科学分野 吉田 茂生 先生

糖尿病網膜症は糖尿病の代表的な合併症であり、放置すると極めて重篤な視覚障害を来す疾患である。久山町研究(福岡県)では、網膜症の有病率は糖尿病患者の約15.0%1)と報告されている。

網膜の中心に位置する黄斑は、中心視力を司る重要な部位であり、黄斑部の細胞内外に液体成分が貯留した状態が黄斑浮腫である。糖尿病患者では1型で4.2~7.9%、2型で1.4~12.8%に黄斑浮腫が起こり、重篤な視力低下を生じうる2)。そのため、糖尿病黄斑浮腫(DME)の鎮静化は患者の視機能保持の観点から極めて重要である。

DMEの病態は多彩であり、単一症例でも複数の要因が混在している(図13)。基本的には、高血糖に起因する終末糖化産物(AGE)の産生、ポリオール経路の亢進、プロテインキナーゼC(PKC)やレニン-アンギオテンシン系(RAS)の活性化により、酸化ストレス、炎症、虚血が亢進する。これらを契機に、血管内皮増殖因子(VEGF)をはじめとした炎症性サイトカインが産生され、血管内皮細胞や周囲組織に様々な変化をもたらす4)。その結果、血液網膜関門(Blood-Retinal Barrier)が破綻、血管透過性が亢進し、血管内物質の漏出により神経網膜の形態・機能を障害し、視力低下を生じる。

1) 安田美穂:あたらしい眼科 2011;28:25-29.
2) Lee R, et al.:Eye Vis 2015;2:17.
3) Das A, et al.:Ophthalmology 2015;122:1375-1394.
4) 石田晋:あたらしい眼科 2010;27;1185-1193.

DMEの診断

【図2】FAによるDMEの分類

FAによるDMEの分類

資料提供:九州大学大学院医学研究院 眼科学分野 吉田 茂生 先生

DMEの診断は、主に検眼鏡やフルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)(図2)によって行われてきた。1990年代後半に網膜の断層像を非侵襲的に描出できる光干渉断層計(OCT)が導入され、病像を客観的・定量的に評価できるようになった。さらに高解像度の機器が開発され、網膜各層、外境界膜(ELM)、視細胞エリプソイドゾーン(EZ)などがより明瞭に描出され、黄斑の網膜厚マップが数秒で得られるようになった。このため現在では、OCTはDMEの診断と治療評価に必要不可欠になっている(図3)。最近ではOCT angiographyによって造影剤なしに網膜血管を層別に描出・評価できるようになり5)、DME診療への貢献が期待されている(図4)。また、超広角眼底像を無散瞳で短時間に撮影できる超広角走査レーザー検眼鏡が広く普及し(図5)、眼底周辺部の病態把握がより容易になった。

FAによるDMEの分類6)では大きく局所性浮腫とびまん性浮腫に大別される(図2)。局所性浮腫は、主に毛細血管瘤からの漏出による部分的な浮腫で、硬性白斑を伴うことが多い。FAでは浮腫内の毛細血管瘤からの蛍光色素の漏出がみられる。一方、びまん性浮腫は、黄斑部の広範な毛細血管の透過性亢進や網膜色素上皮障害などによって起こり、黄斑部全体が膨化する。FAでは黄斑部全体の網膜血管や網膜色素上皮下からのびまん性漏出がみられる。

【図3】OCTによるDMEのタイプ

OCTによるDMEのタイプ

写真提供:
九州大学大学院医学研究院 眼科学分野
小林 義行 先生

【図4】OCT angiographyによるDMEにおける毛細血管瘤の検出

OCT angiographyによるDMEにおける毛細血管瘤の検出

写真提供:九州大学大学院医学研究院 眼科学分野 小林 義行 先生

【図5】超広角走査レーザー検眼鏡による眼底像

超広角走査レーザー検眼鏡による眼底像

写真提供:九州大学大学院医学研究院 眼科学分野 有田 量一 先生

5) 寺崎浩子:あたらしい眼科 2017;34:49-56.
6) Bresnick GH.:Ophthalmology 1983;90:1301-1317.
VEGFとは

VEGFは、血管内皮細胞に特異的な増殖因子として下垂体の濾胞星状細胞の培養液から単離されたが7)、それ以前に同定されていた腫瘍細胞が分泌する血管透過性因子(VPF)8)と同一であることが判明した9)。分子量34~45kDaの糖蛋白質で、二量体からなる。

網膜では、血管内皮細胞、周皮細胞、グリア細胞、ミュラー細胞、神経節細胞、網膜色素上皮細胞などでVEGF発現が認められる10)。VEGFの発現誘導因子として、虚血が最も重要である11)

糖尿病網膜症は臨床的に①単純網膜症、②増殖前網膜症、③増殖網膜症に分類できる(Davis分類)。各病期に対応する基本病態は、①網膜血管の透過性亢進、②網膜血管の内腔閉塞、③新生血管を伴う線維血管増殖組織の瘢痕収縮である。いずれの病態にもVEGFが関与しており、全ての病期でDMEが生じうる11)。VEGFをサル眼に硝子体注射すると、網膜出血、毛細血管瘤、網膜血管閉塞など網膜症類似の眼底像を呈する12)。VEGFは糖尿病網膜症の疾患責任因子と考えられ11)、VEGFを抑制することは黄斑浮腫改善のため理にかなった治療法である。

7) Leung DW, et al.:Science 1989;246:1306-1309.
8) Senger DR, et al.:Science 1983;219:983-985.
9) Keck PJ, et al.:Science 1989;246:1309-1312.
10) Murata T, et al.:Lab Invest 1996;74:819-825.
11) 石田晋編:知っているようで知らない 新しい糖尿病網膜症診療, 2016, pp. 36-41, メジカルビュー社, 東京
12) Tolentino MJ, et al.:Ophthalmology 1996;103:1820-1828.

L.JP.MKT.OP.02.2017.1171

ページの最上部に移動

このサイトは、弊社の医療用医薬品である眼科用VEGF阻害剤を
正しく理解・使用していただくための情報提供サイトです。
医療関係者の皆様に適正使用の推進ならびに安全性に関する情報を提供しております。
ご利用の際は、必ず 注意事項 をお読み下さい。

医療関係者の方へ

こちらは、医療関係者のためのページです。
あなたは医療関係者ですか?