アイリーア治療戦略

 

BRVO:網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
~浮腫の遷延化の観点から~

BRVO発症早期に抗VEGF薬によって厳格に黄斑浮腫を治療することで、良好な視力予後が期待されます。

黄斑浮腫遷延の原因として、網膜毛細血管瘤の形成が関与している可能性があります。

早期から厳格な抗VEGF治療をすることは黄斑部血流、網膜毛細血管瘤にも影響し、黄斑浮腫の遷延化を抑制できる可能性があります。

毛細血管瘤があると黄斑浮腫が遷延しやすく、
視力予後が不良である可能性が示唆されています

最終視力の予測因子について検討したところ、初診時視力および黄斑浮腫遷延が最終視力と有意に関連することが示されました。(各 p<0.001、p=0.019;重回帰分析)

黄斑浮腫遷延のリスク因子として、毛細血管瘤(MA)と年齢が同定されました。(表1)

目 的:
BRVO患者における黄斑浮腫遷延のリスク因子を同定し、黄斑浮腫遷延のメカニズムおよび選択すべき治療アプローチについて検討する。
試験デザイン:
単施設、後ろ向き、症例対照観察研究。
対 象:
BRVOに伴う黄斑浮腫(ME)を有する患者66例66眼
方 法:
2005年3月~2014年10月の間に名古屋市立大学を受診し、1年以上経過観察が可能であった患者の独立した最終視力予測因子、および予測因子に対するリスク因子を同定し、同定したリスク因子に対する治療アプローチについて検討した。治療方法の内訳は、トリアムシノロンアセトニドのテノン嚢下注射(STTA)20眼、抗VEGF薬(ラニビズマブ;IVR)22眼、STTAからIVRへの切り替え16眼、硝子体切除術4眼、未治療4眼であった。
評価項目:
最終視力の予測因子、ME遷延のリスク因子、BRVO発症後の毛細血管瘤(MA)形成時期、抗VEGF薬投与時期別のMA形成数および黄斑浮腫遷延率 など


毛細血管瘤はBRVO発症後、比較的早期に発生します

BRVO発症後6ヵ月以内に51%(19/37眼)、9ヵ月以内に84%(31/37眼)で毛細血管瘤が形成されました。(図1-B)


抗VEGF薬の投与時期がMAの形成に与える影響(参考情報)

早期投与群と遅延投与群を比較すると、早期投与群の方がMAの形成数が有意に少ないことが示されました。(図2)

黄斑浮腫遷延の発生率は、早期投与群20%に対し、遅延投与群65%でした。
(P<0.01、対応のあるt検定)


抗VEGF薬が黄斑部の循環に与える影響(参考情報)

NPAは投与6ヵ月後に減少しました。特に網膜深層ではベースライン時より20%以上の減少が認められました。

Flow Areaは、抗VEGF薬の投与回数が4回未満の群に比べて、4回以上の群で増加しました。特に網膜深層では、4回以上投与群においてベースライン時より20%以上の増加が認められました。

目 的:
網膜静脈閉塞症(RVO)に伴う黄斑浮腫を有する患者において、抗VEGF薬投与前後の網膜血行動態をOCTAを用いて評価すること
試験デザイン:
後ろ向き、連続症例シリーズ観察研究。
対 象:
RVOに伴う黄斑浮腫を有する患者12例23眼(BRVO8眼、CRVO4眼、僚眼11眼)
方 法:
2014年11月〜2016年5月に名古屋市立大学で実施した。BRVO患者にはラニビズマブ、CRVO患者にはアフリベルセプトを投与し、初回投与から6ヵ月間毎月経過観察を行った。
評価項目:
治療前および治療6ヵ月後の最高矯正視力(BCVA)、中心網膜厚(CRT)を測定した。OCTAを用いて治療前後のFAZ、NPAs、Flow Areaを評価した。
安全性:
記載なし(安全性情報はDIページを参照)

※OCTAは中心窩を中心とした3×3mmの範囲を測定。
FAZ:中心窩無血管域、NPAs:無灌流領域、Flow Area:流量範囲

BRVOに伴う黄斑浮腫を有する患者の視力改善とその維持の
ためには、アイリーアの早期投与が望ましいと考えられます

アイリーア投与群では24週までの4週ごと投与により得られた改善視力が、
8週ごと投与により52週まで維持されました。
一方、24週以降、アイリーアによるレスキュー治療が可能となったレーザー治療群では、
アイリーア投与群で得られた視力改善(平均17.1文字)には及びませんでした。

1) 24週目以降、レーザー治療群の67例がアイリーア2mg投与によるレスキュー治療を、アイリーア投与群の9例がレーザー治療によるレスキュー治療を受けた
2) 治療群、地域およびベースライン最高矯正視力を固定効果、最高矯正視力文字数のベースライン値を共変量としたANCOVAモデル
3) アイリーア投与群-レーザー治療群

LOCF:欠測値を欠測前の最後の測定値を用いて補完する方法

1) 最初の投与/治療から52週目までにベースラインから15文字以上の視力改善が最初に認められるまでの期間
2) 24週目以降、レーザー治療群の67例がアイリーア2mg投与によるレスキュー治療を、アイリーア投与群の9例がレーザー治療によるレスキュー治療を受けた
3) アイリーア投与群の投与回数の目安

OC:欠測値を他の値で補うことなく、実測値のみを用いて解析する方法

【主要評価項目の結果】24週目に最高矯正視力文字数でベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合は、アイリーア投与群52.7%、レーザー治療群26.7%であり、アイリーア投与群のレーザー治療群に対する優越性(調整済み群間差(95%信頼区間):26.6%(13.0,40.1)、P値:0.0003)*が検証された。

*地域およびベースライン最高矯正視力を層としCMH型の重みを用いて調整した両側CMH検定

日本人を含む第III相国際共同試験(VIBRANT試験)の試験概要と安全性

実施地域:米国、カナダ、日本の3ヵ国、62施設

目 的:
BRVOに伴う黄斑浮腫を有する患者を対象に、アイリーアの有効性について黄斑レーザー光凝固術に対する優越性を検証するとともに、安全性についても検討する
対 象:
BRVOに伴う黄斑浮腫を有する患者183例(うち日本人21例)
試験デザイン:
無作為化二重遮蔽比較対照試験
方 法:
対象患者を、アイリーア投与群(アイリーア2mg投与)およびレーザー治療群の2群に無作為に割り付けた。アイリーア投与群ではアイリーア2mgを20週目まで4週ごとに、その後は24週目の投与以降、48週目まで8週ごとに投与した。また、レスキュー治療基準に従い、36週目にレーザー治療を行った。レーザー治療群では初回治療日に黄斑レーザー光凝固術による治療を実施した。また、レスキュー治療基準に従い、12、16、20週目のいずれかにレーザー治療を行い、24週目以降はレスキュー治療基準に該当した時点よりアイリーア投与を開始した。
[レスキュー治療基準]:12週目以降
 ・OCTで中心網膜厚(CRT)が前回までの最低値よりも50μm超増加
 ・OCTにより検出される新規または遷延性の網膜内嚢胞様変化または網膜下液、もしくは中心サブ
  フィールドにおける遷延性のびまん性浮腫
 ・BRVOが原因で、最高矯正視力文字数が前回までの最高値と比べて5文字以上低下し、かつOCTで
  中心網膜厚(CRT)が前回までの最低値よりも増加
主な有効性 
評価項目:
主要性評価項目:
 24週目に最高矯正視力文字数でベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合
二次的評価項目:
 ①24週目における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量
 ②24週目における中心網膜厚(CRT)のベースラインからの変化量
 ③24週目におけるNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量
追加評価項目:
 52週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合
 52週目における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量
 52週目における中心網膜厚(CRT)のベースラインからの変化量
 52週目におけるNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量
 24週目および52週目における網膜内の液体成分の状態
 15文字以上の視力改善が最初に認められるまでの期間(52週目まで)など
解析計画:
検証的な解析
 主要評価項目(FAS):アイリーア投与群のレーザー治療群に対する優越性の検証
 二次評価項目(FAS):同上。ただし、検定の多重性を考慮し、主要評価項目で優越性が示された場合
 に限り、事前に定めた順序(①から昇順)に従い検定を行う。
探索的な解析
 追加評価項目(FAS)
 部分集団解析:ベースラインの網膜灌流状態別の主要評価項目および二次的評価項目の解析、日本
 人集団の解析など
 ※検定結果はすべて参考値として示す。
安全性:
網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫を有する患者を対象として国内外で実施された第Ⅲ相試験(52週間)において、本剤2mgを投与された158例(本剤群91例、対照群67例)中43例(27.2%)に副作用が認められた。主な副作用は、結膜出血26例(16.5%)であった。うち本剤を投与された日本人症例18例(本剤群11例、対照群7例)中3例(16.7%)に副作用[眼圧上昇、眼痛、尿中血陽性、尿中ブドウ糖陽性、蛋白尿:各1例(5.6%)]が認められた。本試験(52週間)において、試験薬に関連する試験眼の重篤な有害事象および試験薬に関連する全身性の重篤な有害事象は認められなかった。試験薬に関連する投与中止に至った有害事象は、アイリーア群1例(眼圧上昇)に認められた。
※投与手技に起因する有害事象を含む

OCT(optical coherence tomography): 光干渉断層計 FAS(full analysis set): 最大の解析対象集団
NEI VFQ-25(National Eye Institute 25-item Visual Function Questionnaire): 米国国立眼病研究所の25 項目からなる視覚機能についてのアンケート

●偽注射:硝子体内注射と同じ処置を行うが、注射の代わりに針のない注射シリンジを局所麻酔下で眼球に押し付ける方法
●レーザー偽照射:黄斑治療用のレンズを装着し、細隙灯顕微鏡のスイッチを入れ、レーザー治療群と同じ治療時間、
 レーザーのスイッチを切ったまま(PASCALレーザーの場合は出力を0)、レーザー照射と同じ音を出す方法
●中心網膜厚(CRT:central retinal thickness):中心サブフィールド(中心窩から直径1mm の範囲)の網膜厚

網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の用法・用量


アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回あたり2mg(0.05mL)を硝子体内投与する.投与間隔は,1ヵ月以上あけること.

1) Tomiyasu T, et al.: Sci Rep. 2016;6:29445. (Creative Commons Attribution license [CC-BY]).
2) Suzuki N, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci. 2016;57:5681-5687.
(copyright [2016], with permission from Dr. Suzuki). より一部改変

L.JP.MKT.OP.05.2018.1385

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