アイリーア治療戦略

 

日本人ポリープ状脈絡膜血管症に対するアフリベルセプト硝子体内投与の1年間の治療成績:APOLLO試験
One-Year Outcomes following Intravitreal Aflibercept for Polypoidal Choroidal Vasculopathy in Japanese Patients: The APOLLO Study
Oshima Y, et al. Ophthalmologica. 2017; 238: 163-171

九州大学大学院医学研究院 眼科学分野 特任准教授 福岡大学筑紫病院 准教授 大島 裕司 先生

Author's Comment

 日本人の滲出型加齢黄斑変性(wAMD)では、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)が約半数を占めるといわれています。典型AMDでは抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬による単独療法が標準治療として定着している一方で、PCVでは抗VEGF薬と光線力学的療法(PDT)との併用療法が選択される場合もあり、標準治療の確立には至っていないのが現状です。
 当施設では、PCVの治療方針として、アフリベルセプトによる単独療法(導入期は3回連続毎月投与、維持期はTreat and Extend)を基本としていますが、患者さんによっては、アフリベルセプトとPDTとの併用療法を行う場合もあります()。日本人PCV患者に対するアフリベルセプト単独療法の有効性を示す臨床研究については、これまでにもいくつかの報告がありますが、そのほとんどは後向き研究でした。
 そこで今回、我々は、日本人未治療PCV患者を対象に、アフリベルセプト単独療法の有用性を検討する多施設共同前向き試験として、APOLLO試験を実施しました。APOLLO試験における投与方法は、アフリベルセプトの国際第Ⅲ相試験であるVIEW試験にならい、導入期は3回連続毎月投与し、維持期は8週ごとの定期的投与を行うレジメン(2q8)を採用しました。1年間にわたるアフリベルセプト単独療法の結果、良好な視力改善に加え、ポリープ状病巣の退縮が高率に認められ、PCVに対するアフリベルセプト単独療法の有用性が確認されました。

九州大学病院眼科におけるPCVの治療方針

図 九州大学病院眼科におけるPCVの治療方針

背景および目的

 アフリベルセプトは、可溶性のデコイ受容体として、血管内皮増殖因子(VEGF)や胎盤成長因子(PlGF)と高い親和性で結合する融合蛋白製剤である1,2)。アフリベルセプトの国際第Ⅲ相試験であるVIEW試験(VIEW1試験およびVIEW2試験)では、滲出型加齢黄斑変性(wAMD)患者を対象として、ラニビズマブ0.5mg4週ごと投与に対するアフリベルセプト2mg8週ごと投与(導入期は3回連続毎月投与、維持期は8週ごとの定期的投与;2q8)の非劣性が検証され、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)を含むwAMDに有効であることが示された3,4)。本邦においては、アフリベルセプト単独療法によるPCV患者の治療によって、良好な視力改善やポリープ状病巣の退縮が認められることが複数の臨床研究で報告されているが、そのほとんどは後向き研究であった5,6)
 そこで、未治療PCV患者を対象とした多施設共同前向き試験である本研究において、アフリベルセプト単独療法による1年間の視力改善効果、形態学的変化を検討した。

※“おとりの受容体”としてリガンドと結合し、本来の受容体を介したシグナル伝達を阻害する受容体のこと

対象および方法

 2013年7月~12月に国内5施設においてPCVと診断された未治療PCV患者50例を対象とし、アフリベルセプト硝子体内投与による単独療法を実施した。アフリベルセプトは導入期3回連続毎月投与後、維持期には8週ごとの定期的投与(2q8)を行った(図1)。図1に示すスケジュールに従い、最高矯正視力(BCVA)測定(logMAR)、光干渉断層計(OCT)検査、フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)検査、インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)検査などを実施した。
 主要評価項目はBCVAが改善・維持された患者の割合であり、12ヵ月間のBCVA低下が0.3 logMAR未満だった場合を「改善・維持」と定義して評価した。副次評価項目は、6ヵ月および12ヵ月後のベースラインからのBCVAの平均変化量、中心窩網膜厚(CFT)の平均変化量、滲出性変化(網膜内液/網膜下液、漿液性網膜色素上皮剝離)が認められた患者の割合などであった。

図1試験スケジュール

図1 試験スケジュール

結 果

ベースライン特性

 評価対象となったPCV患者50例のベースライン特性を表1に示す。

表1ベースライン特性(PCV50例/50眼)

表1 ベースライン特性(PCV50例/50眼)
中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対する承認用法・用量

アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回, 連続3回(導入期)硝子体内投与する.その後の維持期においては, 通常, 2ヵ月ごとに1回, 硝子体内投与する.なお,症状により投与間隔を適宜調節するが, 1ヵ月以上あけること.

視力

 平均BCVA(logMAR)は、ベースラインの0.33±0.34から、6ヵ月後には0.15±0.32、12ヵ月後には0.12±0.25となり、有意な改善が認められた(いずれもp<0.0001、paired t-test)(図2a)。BCVAが改善・維持(BCVA低下が0.3 logMAR未満)された患者の割合は、6ヵ月後では100%、12ヵ月後(主要評価項目)では97.6%であった(図2b)。

図2アフリベルセプト治療開始後の最高矯正視力の変化

図2 アフリベルセプト治療開始後の最高矯正視力の変化

CFTと滲出性変化

 平均CFTは、ベースラインの355.7±99.4μmから、6ヵ月後には230.0±66.7μm、12ヵ月後には238.5±63.9μmとなり、有意な減少が認められた(いずれもp<0.0001、paired t-test)(図3)。
 滲出性変化はベースライン時には50例全例で認められたが、6ヵ月後には15例(32.6%)、12ヵ月後には9例(22.0%)となり、滲出性変化が認められる患者の割合は有意に減少した(いずれもp<0.0001、Fisher’s exact test)(図4a)。

図3アフリベルセプト治療開始後の中心窩網膜厚の推移(副次評価項目)

図3 アフリベルセプト治療開始後の中心窩網膜厚の推移(副次評価項目)

ポリープ状病巣と異常血管網

 IA画像の評価が可能であったのは、ベースライン時、6ヵ月後、12ヵ月後で、それぞれ50眼、42眼、40眼であった。ベースライン時には50眼全眼でポリープ状病巣が認められたが、6ヵ月後には23眼(54.8%)、12ヵ月後には29眼(72.5%)で完全退縮が確認された(いずれもp<0.0001、Fisher’s exact test)(図4b)。ベースライン時の平均ポリープ状病巣数は2.76個であったが、ポリープ状病巣の退縮が認められなかった眼における平均ポリープ状病巣数は、6ヵ月後には1.89個(19眼)、12ヵ月後には1.91個(11眼)となり、有意に減少した(それぞれp=0.0010、p=0.0156、Wilcoxon signed-rank test)。
 ポリープ状病巣からのフルオレセインの漏出は、ベースライン時には49眼(98%)で認められたが、6ヵ月後には8眼(19.1%)、12ヵ月後には2眼(5.0%)となり、有意に減少した(いずれもp<0.0001、Fisher’s exact test)(図4c)。異常血管網からのフルオレセインの漏出は、ベースライン時には40眼(80%)でみられたが、6ヵ月後には8眼(19.1%)、12ヵ月後には6眼(15.0%)となり、有意に減少した(いずれもp<0.0001、Fisher’s exact test)(図4d)。

図4アフリベルセプト治療開始後の形態学的変化(副次評価項目)

図4 アフリベルセプト治療開始後の形態学的変化(副次評価項目)

有害事象

 有害事象が6例(12%)でみられたが、重篤な血栓塞栓性有害事象の発現は認められなかった。全身性の有害事象として、S状結腸癌、腎不全の悪化、転倒による外傷、脳腫瘍がそれぞれ1例(2%)認められた。また、眼に関連する有害事象として、網膜下出血が1例(2%)、ヘルペス性角膜炎が1例(2%)認められた(表2)。なお、有害事象のため投与中止に至った例が5症例認められた。

表2有害事象

表2 有害事象

考 察

 本研究では、VIEW試験3,4)と同じ2q8投与レジメンを用いた。その結果、1年間の治療において、BCVA、CFTの有意な改善・維持が認められ、高いDry macula率が得られた。
 PCV患者に対するアフリベルセプトの有効性については、これまでにいくつかの報告があるが、本研究で認められた視力改善効果やポリープ状病巣の退縮効果はこれらと類似していた。未治療PCV患者40例を対象にアフリベルセプト2q8の有効性を検討したVAULT試験では、平均BCVAはベースラインの55.1文字から、12ヵ月後には64.2文字に有意に改善し、12ヵ月後のポリープ状病巣の完全退縮率は66.7%であった7)。また、日本人未治療PCV患者90例を対象にアフリベルセプト2q8の有効性を検討した後向き研究では、平均BCVA(logMAR)はベースラインの0.31から12ヵ月後には0.17に有意に改善し、12ヵ月後のポリープ状病巣の完全退縮率は55.4%であった5)。一方で、ラニビズマブ単独療法(必要に応じて投与)による12ヵ月後のポリープ状病巣の完全退縮率は19~40%であったとの報告がある8-10)。アフリベルセプトの本研究におけるポリープ状病巣の退縮効果が良好であった理由は明らかではないが、投与レジメンが異なること(定期的投与)、アフリベルセプトはVEGF-Aに加えVEGF-BおよびPlGFを遮断することなどが理由として推測される1)
 異常血管網については、抗VEGF薬では効果がないか、むしろ拡大するとの報告がある5,8,9)。本研究では異常血管網そのものについては検討していないが、フルオレセインの漏出によって異常血管網の活動性を評価した。その結果、異常血管網からのフルオレセイン漏出は有意に減少し、ポリープ状病巣からの漏出にも有意な減少がみられた(異常血管網からのフルオレセイン漏出を示した眼数:ベースライン時80.0%、12ヵ月後15.0%、ポリープ状病巣からのフルオレセイン漏出を示した眼数:ベースライン時98.0%、12ヵ月後5.0%)。また、Dry maculaが得られた患者の割合は12ヵ月後で78.1%であった。VIEW試験では、2q8レジメンで投与されたwAMD患者のうち、12ヵ月後にDry maculaが得られた患者の割合は71.8%と報告されており3)、本研究の結果と同程度であった。これらのことから、アフリベルセプトの2q8レジメンによる単独療法は、典型AMDのみならずPCVに対しても有効であると考えられる。

結 論

 日本人未治療PCV患者に対するアフリベルセプト単独療法(2q8)の有効性を検討した本多施設共同前向き試験において、視力および形態学的改善におけるアフリベルセプトの有効性が示された。今後、より長期の観察期間による他の治療レジメンとの比較検討が必要である。

1. Papadopoulos N, et al. Angiogenesis. 2012; 15(2): 171-185.
2. Stewart MW, et al. Br J Ophthalmol. 2008; 92(5): 667-668.
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4. Schmidt-Erfurth U, et al. Ophthalmology. 2014; 121(1): 193-201.
5. Yamamoto A, et al. Ophthalmology. 2015; 122(9): 1866-1872.
6. Saito M, et al. Retina. 2014; 34(11): 2192-2201.
7. Lee JE, et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2017; 255(3): 493-502.
8. Hikichi T, et al. Am J Ophthalmol. 2012; 154(1): 117-124.
9. Mori R, et al. Jpn J Ophthalmol. 2013; 57(4): 365-371.
10. Koh A, et al. Retina. 2012; 32(8): 1453-1464.

L.JP.MKT.OP.01.2018.1221

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