アイリーア治療戦略

 

これからのPCV治療戦略
PLANET試験の結果を踏まえて

PLANET試験におけるポリープ状脈絡膜血管症に対するアフリベルセプト硝子体内投与の有効性および安全性:無作為化臨床試験

PLANET試験が示すPCVに対するアイリーアの有用性 PLANET試験 summary Lee WK, et al.: JAMA Ophthalmol. 2018 May 2. [Epub ahead of print]

背景および目的

光線力学的療法(PDT)は従来よりポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の治療に汎く用いられてきたが、再発性の出血や滲出および遅発性の萎縮のリスクを伴う、長期的には脈絡膜虚血や網膜萎縮に起因すると考えられる経時的な視力低下をきたす可能性があるなどの懸念点が存在する。そのため、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬による単独療法で十分な視力改善が得られない場合にのみ、レスキュー治療としてPDTを施行することの妥当性についての検討が求められていた。
そこで本試験では、PCV患者に対するアイリーア単独療法とPDT併用療法の有効性および安全性について比較検討した。

対象および方法(表1)

2014年5月から2016年8月に、日本を含むアジア、豪州、欧州の62施設でPCVと診断された333例を対象とした。
本試験では、導入期にアフリベルセプト(IVA)2mgを3回連続毎月投与し、その後、12週時に、IVA投与とシャムPDTレスキュー治療を受ける「アイリーア単独療法群」と、IVA投与と実薬PDTレスキュー治療を受ける「PDT併用療法群」の2群に無作為割り付けを行った(図1)。なお、12~52週までは、レスキュー治療を必要としない患者においては、IVA 2mgの8週毎投与が行われ、レスキュー治療を必要とする患者においては、IVA 2mgの4週毎投与に加えてシャムまたは実薬PDTを施行した。また、52~96週までは治験担当医の裁量により、1週または2週単位で投与間隔を延長するTreat and Extend(T&E)を行うことも可能とした。
主要評価項目は、52週時における最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの平均変化量とし、アイリーア単独療法群のPDT併用療法群に対する非劣性を検証した。

表1日本人を含む第Ⅲb/Ⅳ相国際共同試験(PLANET試験:1年目)試験概要
目  的:
ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)患者における、アイリーア単独療法の有効性および安全性を、アイリーア+光線力学的療法(レスキューPDT)と比較検討する。
デザイン:
観察期間96週間、無作為化、二重遮蔽、第Ⅲb/Ⅳ相試験
対  象:
・PCVと診断された50歳以上の患者 ・病変最大径が5,400μm未満であるか9乳頭面積以下の患者 ・最高矯正視力がETDRSで73~24文字の患者
方  法:
・本試験は以下の期間により構成される。
導入期:0~8週目/無作為割り付け:12週目/治療継続期:12~52週目(アイリーア2q8±レスキュー治療)、52~96週目(Treat and Extend±レスキュー治療)
・導入期にはすべての患者にアイリーアを3回毎月投与する。
・12週目にアイリーア単独療法群、PDT併用療法群のいずれかに1:1の割合で無作為に割り付ける。その際、12週時点でレスキュー治療が必要と評価された患者、および日本人患者が均等に含まれるように割り付ける。
・レスキュー治療が不要と評価された患者には52週目までアイリーアを8週毎に投与する。
・12週目以降、レスキュー治療が必要と評価された患者には、アイリーア単独療法群ではアイリーアの4週毎投与とシャムPDTによるレスキュー治療を、PDT併用療法群ではアイリーア4週毎投与と実薬PDTによるレスキュー治療を行う。
評価項目:
<主要評価項目>
・52週時における最高矯正視力のベースラインからの平均変化量
<副次評価項目>
・52週時における15文字以上の視力低下がみられなかった患者の割合
<探索的評価項目>
・中心網膜厚(CST)の変化量 ・ポリープ状病巣の活動性および退縮 ・アイリーアおよびPDTによる治療回数 ・レスキュー治療を必要とした患者の割合およびレスキュー治療の効果 など
統計解析:
<主要評価項目(FAS)>
・アイリーア単独療法群のPDT併用療法群に対する非劣性の検証(限界値:-5文字)。
・変化量の最小二乗平均の差(アイリーア単独療法群-PDT併用療法群)の95%信頼区間(CI)を、ベースライン値を共変量とし、投与群、民族、および12週目におけるレスキュー治療適応の有無を固定効果とした共分散分析により求める(欠測値はLOCFにより補完)。
<副次評価項目(FAS)>
主要評価項目が検証された場合に実施(限界値:-7%)。
<その他>
探索的評価項目の解析にはFASを、安全性の評価にはSAFを用いる。なお、主要な評価項目の結果については、感度解析により頑健性を確認する。
利益相反:
本試験はBayerの依頼により実施された第Ⅲb/Ⅳ相試験である。
図1試験デザイン
図1 試験デザイン
日本における中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対するアイリーアの承認用法・用量は、「アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、2ヵ月ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以上あけること。」です。


結 果

ベースラインの患者背景および疾患特性

ベースラインの平均年齢はアイリーア単独療法群70.8歳、PDT併用療法群70.4歳、平均BCVAはそれぞれ57.7文字、59.0文字(表2)、日本人の割合はいずれも47.8%であった。

レスキュー治療を必要とした患者の割合

12週時にレスキュー治療を必要とした患者は、アイリーア単独療法群8例(5.1%)、PDT併用療法群11例(6.8%)であった(表2)。また、52週後までにレスキュー治療を必要とした患者は、それぞれ19例(12.1%)、23例(14.3%)であった(図2)。なお、52週後までのアイリーアの平均投与回数は、アイリーア単独療法群8.1回、PDT併用療法群8.0回、PDT(シャムPDTを含む)の施行回数は、いずれも0.2回であった。

表2ベースラインの患者背景および疾患特性
表2 ベースラインの患者背景および疾患特性
図2レスキュー治療を必要とした/しなかった患者の割合(52週:探索的評価項目、LOCF、FAS)
図2 レスキュー治療を必要とした/しなかった患者の割合(52週:探索的評価項目、LOCF、FAS)
BCVAの平均変化量の推移

本試験の主要評価項目である52週時におけるBCVAのベースラインからの平均変化量[標準偏差]は、アイリーア単独療法群10.7[11.3]文字、PDT併用療法群10.8[10.7]文字で、群間差は-0.1[95%CI:-2.9-1.6]であり、アイリーア単独療法群のPDT併用療法群に対する非劣性が検証された(図3)。

滲出性変化とポリープ状病巣

52週時にOCTで滲出性変化が認められなかった患者は、アイリーア単独療法群135例、PDT併用療法群141例であり、いずれも85.0%以上であった(探索的評価項目、OC、FAS)。
52週時に活動性のポリープ状病巣が認められなかった患者は、アイリーア単独療法群116例(81.7%)、PDT併用療法群136例(88.9%)であった(図4)。

レスキュー治療を受けた患者群における有効性

52週時までにレスキュー治療を受けた患者群の52週時におけるBCVAのベースラインからの平均変化量(調整済み最小二乗平均値[標準誤差])は、アイリーア単独療法群(19例)では2.9[2.7]文字、PDT併用療法群(23例)では3.4[2.4]文字であった(探索的評価項目、LOCF、FAS)。

図3BCVAの平均変化量の推移(52週:主要評価項目、LOCF、FAS)
図3 BCVAの平均変化量の推移(52週:主要評価項目、LOCF、FAS)
図4活動性のポリープ状病巣が認められない患者の割合(52週:探索的評価項目、OC、FAS)
図4 活動性のポリープ状病巣が認められない患者の割合(52週:探索的評価項目、OC、FAS)
有害事象

52週時までに、有害事象(すべての有害事象)がアイリーア単独療法群157例中102例(65.0%)、PDT併用療法群161例中86例(53.4%)に認められた(表3)。そのうち試験薬に関連する眼の有害事象はアイリーア単独療法群49例(31.2%)、PDT併用療法群47例(29.2%)に認められ、主な有害事象はそれぞれ結膜出血8例(5.1%)、ドライアイ9例(5.6%)であった。眼の重篤な有害事象はPDT併用療法群にのみ5例(3.1%)認められた。

考 察

PLANET試験は、PCVに対する抗VEGF薬の有効性、安全性について評価した数少ない大規模無作為化比較試験の一つである。
PLANET試験では、アイリーア単独療法により臨床的に意味のある10文字以上の視力改善が得られ、ほとんどの症例が、効果不十分な場合に行うこととされていたPDTによるレスキュー治療を必要としなかった。

結 論

PLANET試験において、85%以上の症例はPDTレスキュー治療を必要とせず、PCV患者におけるアイリーア単独療法の優れた有効性が示され、忍容性も良好であった。アイリーア単独療法においてPDTレスキュー治療を必要とした症例は15%未満に過ぎなかったが、これらの症例において視力改善に対するPDTレスキュー治療追加のベネフィットは認められなかった。

表3有害事象(SAF
表3 有害事象(SAF※)

これからのPCV治療戦略 PLANET試験の結果を踏まえて

PCV治療における注意点と推奨治療

PCVは、滲出型加齢黄斑変性(wAMD)の治療を考える上で重要な疾患サブタイプです。抗VEGF薬およびPDTの有用性が認められていますが、治療により、ポリープ状病巣は一時的に退縮しますが、再発の原因となる異常血管網(BVN)が残存するため、長期にわたるプロアクティブな治療戦略の検討が必要です。
実際、最近提唱された網膜専門医グループのPCVの推奨治療において、PLANET試験の結果に基づき、単独療法における抗VEGF薬の効果には薬剤間差がある可能性に留意すべきことが示されており、また、アイリーアの単独療法による治療開始を選択した場合には定期的投与の遵守が推奨されています(表41)

表4網膜専門医により示されているPCVの治療方針および推奨治療

抗VEGF薬単独療法を選択する場合は、薬剤間差がある可能性に留意する
(ただし、PCVにおいてこれまで抗VEGF薬間を直接比較した試験はない)

  • ラニビズマブを用いる場合:EVEREST-II試験において、単独療法よりもPDTとの併用療法の方が望ましいことが明確に示されている。
  • アイリーアを用いる場合:PLANET試験において、レスキュー治療としてのPDTの併用に付加的効果がないことが示唆されている。
    ベースライン時に併用した場合に付加的効果が得られるかどうかについては現在データがない。
    アイリーア単独療法を選択した患者では、PLANET試験で用いられた定期的投与を遵守できるようにしておく。

Reprinted from Ophthalmology, 125(5), Cheung CMG et al. Polypoidal Choroidal Vasculopathy: Definition, Pathogenesis,
Diagnosis, and Management, 708-724, Copyright 2018, with permission from Elsevier.

1) Cheung CMG, et al.: Ophthalmology. 2018; 125: 708-724

PCVに対するアイリーアの治療効果

当施設では、PCVの治療方針としてアイリーア単独によるプロアクティブ療法(導入期:3ヵ月毎月投与、維持期:Treat and Extend(T&E))を基本としています。アイリーアは症例集積研究において、プロアクティブ治療により良好な視力改善効果を示し、ポリープ状病巣の完全退縮率が50~70%程度であったこと、またPLANET試験においても、アイリーア単独療法により優れた視力改善効果(平均10.7文字)が得られ、80%以上の症例で活動性ポリープの消失が認められたこと、さらにPDTレスキュー治療を必要としなかった患者割合が85%以上であったことが示されています。このような特徴的な治療成績は、アイリーアのユニークな製剤特性(VEGFファミリー阻害作用(特にVEGF-A/PlGF)2)、VEGFとの強力な結合親和性2)表5)、効果持続性3)の3つの特徴)によるものと推察されます。

表5抗VEGF薬のVEGF-VEGF受容体結合の阻害作用(IC50, in vitro
表5 抗VEGF薬のVEGF-VEGF受容体結合の阻害作用(IC50, in vitro)

Papadopoulos N, et al.: Angiogenesis. 2012; 15: 171-185

2) Papadopoulos N, et al.: Angiogenesis. 2012; 15: 171-185 3) Stewart MW, et al.: Br J Ophthalmol. 2008; 92: 667-668

私の考えるPCV治療方針

当施設では最適な治療目標として、治療初期の視力改善(Get Vision)、改善した視力の長期維持(Keep Vision)、そして治療負担の軽減(Reduce Number)の3つの達成を重視しています。そこで、患者の状況にあわせて負担の軽減を目指すT&Eを採用し、投与レジメンとして、アイリーアを導入期では3回連続投与、その後、維持期では4週間単位で投与間隔を調節し、最大延長間隔の16週間を目指します(表6)。
投与間隔の延長・短縮の判断は、OCTにおける滲出性変化、新たな網膜出血の有無によって行います。アイリーア頻回投与後の治療無反応例や抵抗例では、PDT追加併用や他の抗VEGF薬への変更を検討します。
個々の症例の病態に応じた個別化したプロアクティブな治療法の選択・継続が良好な視力予後の実現において重要です。

表6東京女子医科大学におけるPCVの治療方針
表6 東京女子医科大学におけるPCVの治療方針

資料提供:飯田 知弘先生(東京女子医科大学 眼科学講座 教授・講座主任)

PP-EYL-JP-0013-19-07

ページの最上部に移動

このサイトは、弊社の医療用医薬品である眼科用VEGF阻害剤を
正しく理解・使用していただくための情報提供サイトです。
医療関係者の皆様に適正使用の推進ならびに安全性に関する情報を提供しております。
ご利用の際は、必ず 注意事項 をお読み下さい。

医療関係者の方へ

こちらは、医療関係者のためのページです。
あなたは医療関係者ですか?