アフリベルセプトの結合親和性とVEGF結合活性の持続性
VEGFファミリーリガンドに対する結合親和性
(1)VEGFファミリーリガンドに対する結合親和性(in vitro)1)
アフリベルセプトの各種VEGFファミリーリガンドに対する親和性を表面プラズモン共鳴法を用いて平衡解離定数(KD)により検討しました。アフリベルセプトのヒト(h)VEGF-A165、hVEGF-A121およびhVEGF-Bに対するKDは、それぞれ0.490、0.360、1.92pMで、hPlGF-1およびhPlGF-2に対するKDは、それぞれ392および38.9pMでした。一方、主にリンパ管新生に関与するhVEGF-CおよびhVEGF-Dには測定可能なレベルの結合を示しませんでした。
■ アフリベルセプトのVEGFファミリーリガンドに対する結合親和性(KD、in vitro)
KD:平衡解離定数
NB:no detectable binding
(2)ヒトVEGF受容体のリン酸化およびカルシウム動員に対する阻害作用(in vitro)2)
ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell:HUVEC)を用いて、VEGF-A165によるVEGFR-2のリン酸化および細胞内カルシウム動員に対するアフリベルセプトの作用を検討しました。アフリベルセプト(0.5~3.0nM)は、ヒトVEGF-A165(1.0nM)に対してモル比1:1以上となる1.0nM以上の濃度で、VEGFR-2のチロシンリン酸化の誘導を阻害しました。また、アフリベルセプト(55pM~40nM)はVEGF-A165(50pM)による細胞内カルシウム動員を濃度依存的に阻害し、50%阻害濃度(IC50)は1.2~1.7nMでした。
(3)VEGFによる細胞内カルシウム動員に対する阻害作用(in vitro)3)
HUVECを用いて、VEGF-A165による細胞内カルシウム動員に対するアフリベルセプトの阻害作用を検討した結果、 50%阻害濃度(IC50)は2.42nMでした。
■ 抗VEGF薬の細胞内カルシウム動員に対する阻害作用(IC50、in vitro)
(4)VEGF-VEGF受容体結合に対する阻害作用(in vitro)1)
VEGFR-1またはVEGFR-2を発現させたHEK293細胞を用いて、20pM ヒト(h)VEGF-Aあるいは40pMhPlGF-2と各VEGF受容体の結合に対するアフリベルセプトの50%阻害濃度(IC50)を検討したところ、hVEGF-AおよびhPlGF-2とVEGFR-1、hVEGF-AとVEGFR-2のいずれの結合に対しても、阻害作用が認められました。
■ 抗VEGF薬のVEGF-VEGF受容体結合の阻害作用(IC50、in vitro)
IC50:50%阻害濃度
NB:no detectable binding
(5)VEGFに対する結合親和性(in vitro)3)
アフリベルセプトのVEGF-A165に対する結合親和性を結合平衡除外法(kinetic exclusion assay:KinExA)に より測定した結果、平衡解離定数(KD)は0.1719pM*でした。
■ 抗VEGF薬のVEGFに対する結合親和性(KD、in vitro)
*:原著から単位(fM→pM)を変更
KD:平衡解離定数
平衡解離定数は非線形回帰分析から求め、95%信頼区間は理想的なKD曲線に当てはめることにより算出
(6)VEGF結合活性※の持続性(硝子体内消失半減期(サル、ウサギ)とVEGF結合親和性を用いたシミュレーションモデル)4)
アフリベルセプト硝子体内投与時の時間依存的なVEGF結合活性を一次減衰モデルを用いて検討しました。サルまたはウサギ硝子体内消失半減期と結合親和性の要素を一次減衰モデルに組み入れました。ラニビズマブ0.5mg投与の30日後の結合活性は、アフリベルセプト1.15mg(ラニビズマブ0.5mgと等モル)投与の79日後の結合活性に相当することが示されました。
※ 結合活性=硝子体液中の遊離型薬剤濃度×結合親和性
■ 抗VEGF薬の硝子体内投与によるVEGF結合活性持続時間
<動物データ(サル、ウサギ)を基にしたシミュレーションモデルによる解析>
1)Papadopoulos N, et al.: Angiogenesis 2012; 15: 171-185.
利益相反:本論文の著者は全てRegeneronの社員である。
2)バイエル薬品社内資料[薬効薬理:リン酸化及びCa動員阻害作用(in vitro)]承認時評価資料
3)Schubert W, et al.: Transl Vis Sci Technol 2022; 11: 36.
利益相反:本試験はBayerおよびRegeneronの支援のもと実施、著者らは全てRegeneronもしくはBayerの社員(元社員を含む)である。
4)Stewart MW, et al.: Br J Ophthalmol 2008; 92: 667-668.