臨床データから見るアイリーア8mgの眼局所への影響
アイリーア8mgの構造と作用機序
アイリーア8mgは、既承認のアイリーア[濃度40mg/mL(2mg)、投与容量0.05mL]※と比べ、より高濃度(114.3mg/mL)のアフリベルセプトを含み、より高容量(0.07mL)で硝子体内投与を行う製剤です。
※
未熟児網膜症以外の効能及び効果における用法及び用量[未熟児網膜症:濃度40mg/mL(0.4mg)、投与容量0.01mL]
アフリベルセプトは、VEGFファミリー(VEGF-A、VEGF-B、およびPlGF)との結合メカニズムを有します。
VEGF受容体(VEGFR-1、VEGFR-2):受容体型チロシンキナーゼの一種
監修:北海道大学 大学院医学研究院 眼科学教室 教授 石田 晋 先生
nAMD患者を対象としたPULSAR試験における試験眼の眼内炎症反応は、8mg12週間隔投与群で4例(1.2%)、8mg16週間隔投与群で1例(0.3%)、2mg8週間隔投与群で4例(1.2%)に認められました
PULSAR試験における眼内炎症反応(60週間、試験眼、SAF)
MedDRA ver.25.0
発現例数(発現割合%)
次の事象を眼内炎症反応と定義して集計:前房内細胞、前房のフィブリン、前房のフレア、前房の炎症、房水のフィブリン、自己免疫性ぶどう膜炎、カンジダ性眼内炎、脈絡膜炎、脈絡網膜炎、毛様体炎、眼内炎、眼感染、細菌性眼感染、クラミジア性眼感染、真菌性眼感染、眼内感染、ブドウ球菌性眼感染、眼の炎症、前房蓄膿、感染性虹彩毛様体炎、感染性虹彩炎、感染性ぶどう膜炎、虹彩毛様体炎、虹彩炎、真菌性眼内炎、非感染性眼内炎、非感染性脈絡網膜炎、偽眼内炎、ぶどう膜炎、硝子体細胞、硝子体のフィブリン、硝子体炎、壊死性網膜炎
● SAF(safety analysis set):安全性解析対象集団。無作為化され、少なくとも1回の試験薬投与を受けたすべての患者。実際の投与に基づき解析を行った。
バイエル薬品社内資料[日本人を含む第III相国際共同試験:PULSAR試験]承認時評価資料
DME患者を対象としたPHOTON試験における試験眼の眼内炎症反応は、8mg12週間隔投与群で4例(1.2%)、8mg16週間隔投与群で1例(0.6%)、2mg8週間隔投与群で1例(0.6%)に認められました
PHOTON試験における眼内炎症反応(60週間、試験眼、SAF)
MedDRA ver.25.0
発現例数(発現割合%)
次の事象を眼内炎症反応と定義して集計:前房内細胞、前房のフィブリン、前房のフレア、前房の炎症、房水のフィブリン、自己免疫性ぶどう膜炎、カンジダ性眼内炎、脈絡膜炎、脈絡網膜炎、毛様体炎、眼内炎、眼感染、細菌性眼感染、クラミジア性眼感染、真菌性眼感染、眼内感染、ブドウ球菌性眼感染、眼の炎症、前房蓄膿、感染性虹彩毛様体炎、感染性虹彩炎、感染性ぶどう膜炎、虹彩毛様体炎、虹彩炎、真菌性眼内炎、非感染性眼内炎、非感染性脈絡網膜炎、偽眼内炎、ぶどう膜炎、硝子体細胞、硝子体のフィブリン、硝子体炎、壊死性網膜炎
バイエル薬品社内資料[日本人を含む第II/III相国際共同試験:PHOTON試験]承認時評価資料
nAMD患者を対象としたPULSAR試験における試験眼の眼圧上昇事象は、8mg12週間隔投与群で13例(3.9%)、8mg16週間隔投与群で13例(3.8%)、2mg8週間隔投与群で10例(3.0%)に認められました
PULSAR試験における眼圧上昇事象(60週間、試験眼、SAF)
投与量は2mg投与群が0.05mL、8mg投与群が0.07mLである。
MedDRA ver.25.0
発現例数(発現割合%)
次の事象を眼圧上昇事象と定義して集計:眼圧上昇、高眼圧症
PULSAR試験における投与前の眼圧のベースラインからの変化量の推移(60週間、試験眼、SAF)
バイエル薬品社内資料[日本人を含む第III相国際共同試験:PULSAR試験]承認時評価資料
DME患者を対象としたPHOTON試験における試験眼の眼圧上昇事象は、8mg12週間隔投与群で11例(3.4%)、8mg16週間隔投与群で1例(0.6%)、2mg8週間隔投与群で7例(4.2%)に認められました
PHOTON試験における眼圧上昇事象(60週間、試験眼、SAF)
投与量は2mg投与群が0.05mL、8mg投与群が0.07mLである。
MedDRA ver.25.0
発現例数(発現割合%)
次の事象を眼圧上昇事象と定義して集計:眼圧上昇、高眼圧症
PHOTON試験における投与前の眼圧のベースラインからの変化量の推移(60週間、試験眼、SAF)
バイエル薬品社内資料[日本人を含む第II/III相国際共同試験:PHOTON試験]承認時評価資料
臨床データから見るアイリーア8mgの眼局所への影響(まとめ)
1)バイエル薬品社内資料[日本人を含む第III相国際共同試験:PULSAR試験]承認時評価資料
2)バイエル薬品社内資料[日本人を含む第II/III相国際共同試験:PHOTON試験]承認時評価資料
アイリーア8mgの効能又は効果、効能又は効果に関連する注意、用法及び用量、用法及び用量に関連する注意
4 効能又は効果
- 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
- 糖尿病黄斑浮腫
5 効能又は効果に関連する注意
本剤による治療を開始するに際し、疾患・病態による視力等の予後を考慮し、本剤投与の要否を判断すること。
6 用法及び用量
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として8mg(0.07mL)を4週ごとに1回、通常、連続3回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後の維持期においては、通常、16週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。
7 用法及び用量に関連する注意
7.1
両眼に治療対象となる病変がある場合は、両眼同時治療の有益性と危険性を慎重に評価した上で本剤を投与すること。なお、初回治療における両眼同日投与は避け、片眼での安全性を十分に評価した上で対側眼の治療を行うこと。
7.2
導入期における投与回数については、疾患活動性の評価に基づいて3回未満とすることも考慮すること。また、維持期においては、定期的に疾患活動性を評価し、疾患活動性を示唆する所見が認められた場合は、16週より短い間隔での投与開始又は投与間隔の短縮を考慮すること。[17.1.1、17.1.2参照]
アイリーア®8mg硝子体内注射液114.3mg/mL 電子添文 2024年3月改訂(第2版)
試験概要および安全性
日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験:PULSAR試験
バイエル薬品社内資料[日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験:PULSAR試験]承認時評価資料
試験概要
目的
中心窩下CNVを伴うnAMD患者を対象に、アイリーア8mg12週間隔または16週間隔投与による有効性についてアフリベルセプト2mg8週間隔投与に対する非劣性を検証するとともに、安全性についても検討する
試験対象
中心窩下CNVを伴うnAMD患者1,011例(うち日本人:98例)
投与方法
対象患者をアフリベルセプト2mg8週間隔投与群、アイリーア8mg12週間隔投与群、アイリーア8mg16週間隔投与群の3群に1:1:1の比で無作為に割り付け、硝子体内投与した。試験薬の投与は片眼のみに実施した。
- 2mg8週間隔投与群:アフリベルセプト2mgを4週間隔で連続3回投与後、8週間隔で投与
- 8mg12週間隔投与群:アイリーア8mgを4週間隔で連続3回投与後、12週間隔で投与
- 8mg16週間隔投与群:アイリーア8mgを4週間隔で連続3回投与後、16週間隔で投与
ただし、8mg12週間隔投与群および16週間隔投与群では、16週目以降、DRM基準に従い投与間隔を変更した。
主な安全性評価項目
有害事象、副作用、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡、眼内炎症反応、眼圧上昇事象、眼圧上昇の程度、高血圧事象、APTC定義による動脈血栓塞栓事象 など
安全性
60週間において、すべての有害事象は8mg12週間隔投与群で335例中256例(76.4%)、8mg16週間隔投与群で338例中273例(80.8%)、2mg8週間隔投与群で336例中260例(77.4%)に認められた
主な有害事象(60週間、SAF)
8mg12週間隔投与群:
COVID-19、高血圧が各19例(5.7%)、白内障16例(4.8%)、背部痛15例(4.5%)、上咽頭炎14例(4.2%)、視力低下13例(3.9%)、網膜出血12例(3.6%)、網膜下液、眼圧上昇が各11例(3.3%)、関節痛10例(3.0%)
8mg16週間隔投与群:
COVID-19が31例(9.2%)、上咽頭炎21例(6.2%)、視力低下20例(5.9%)、高血圧18例(5.3%)、白内障15例(4.4%)、硝子体浮遊物、背部痛が各14例(4.1%)、網膜出血、尿路感染が各13例(3.8%)、無症候性COVID-19が11例(3.3%)、硝子体剥離、眼圧上昇が各10例(3.0%)
2mg8週間隔投与群:
視力低下21例(6.3%)、背部痛18例(5.4%)、COVID-19、上咽頭炎が各16例(4.8%)、網膜出血15例(4.5%)、白内障、硝子体浮遊物が各13例(3.9%)、網膜下液、尿路感染、高血圧が各12例(3.6%)
試験薬に関連する重篤な有害事象(60週間、SAF)
8mg12週間隔投与群:本試験においては認められなかった
8mg16週間隔投与群:閉塞隅角緑内障、心筋伷塞、肺塞栓症が各1例
2mg8週間隔投与群:脳血管発作2例、急性心筋伷塞、高血圧が各1例
試験薬に関連する投与中止に至った有害事象(60週間、SAF)
8mg12週間隔投与群:本試験においては認められなかった
8mg16週間隔投与群:虹彩毛様体炎、網膜下液が各1例
2mg8週間隔投与群:脳血管発作1例
試験薬に関連する死亡(60週間、SAF)
本試験においては認められなかった
MedDRA ver.25.0
CNV(choroidal neovascularization):脈絡膜新生血管、DRM(dose regimen modification):用法用量変更、APTC(Antiplatelet Trialistsʼ Collaboration)
日本人を含む第Ⅱ/Ⅲ相国際共同試験:PHOTON試験
バイエル薬品社内資料[日本人を含む第II/III相国際共同試験:PHOTON試験]承認時評価資料
試験概要
目的
DME患者を対象に、アイリーア8mg12週間隔または16週間隔投与による有効性についてアフリベルセプト2mg8週間隔投与に対する非劣性を検証するとともに、安全性についても検討する
試験対象
DME患者660例(うち日本人:74例)
投与方法
対象患者をアフリベルセプト2mg8週間隔投与群、アイリーア8mg12週間隔投与群、アイリーア8mg16週間隔投与群の3群に1:2:1の比で無作為に割り付け、硝子体内投与した。試験薬の投与は片眼のみに実施した。
- 2mg8週間隔投与群:アフリベルセプト2mgを4週間隔で連続5回投与後、8週間隔で投与
- 8mg12週間隔投与群:アイリーア8mgを4週間隔で連続3回投与後、12週間隔で投与
- 8mg16週間隔投与群:アイリーア8mgを4週間隔で連続3回投与後、16週間隔で投与
ただし、8mg12週間隔投与群および16週間隔投与群では、16週目以降、DRM基準に従い投与間隔を変更した。
主な安全性評価項目
有害事象、副作用、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡、眼内炎症反応、眼圧上昇事象、眼圧上昇の程度、高血圧事象、APTC定義による動脈血栓塞栓事象 など
安全性
60週間において、すべての有害事象は8mg12週間隔投与群で328例中245例(74.7%)、8mg16週間隔投与群で163例中126例(77.3%)、2mg8週間隔投与群で167例中123例(73.7%)に認められた
主な有害事象(60週間、SAF)
8mg12週間隔投与群:
高血圧30例(9.1%)、COVID-19が24例(7.3%)、硝子体浮遊物18例(5.5%)、結膜出血14例(4.3%)、上咽頭炎13例(4.0%)、硝子体剥離、貧血、頭痛が各10例(3.0%)
8mg16週間隔投与群:
高血圧25例(15.3%)、COVID-19が18例(11.0%)、白内障9例(5.5%)、貧血8例(4.9%)、結膜出血、上咽頭炎、糖尿病が各7例(4.3%)、点状角膜炎、網膜出血、硝子体浮遊物、下痢が各6例(3.7%)、尿路感染、高カリウム血症、関節痛が各5例(3.1%)
2mg8週間隔投与群:
高血圧18例(10.8%)、COVID-19、上咽頭炎が各7例(4.2%)、結膜出血、眼圧上昇、糖尿病が各6例(3.6%)、尿路感染、頭痛、急性腎障害、急性呼吸不全が各5例(3.0%)
試験薬に関連する投与中止に至った有害事象(60週間、SAF)
8mg12週間隔投与群:虹彩炎1例
8mg16週間隔投与群:本試験においては認められなかった
2mg8週間隔投与群:本試験においては認められなかった
試験薬に関連する重篤な有害事象、試験薬に関連する死亡(60週間、SAF)
本試験においては認められなかった
EDCの設定上の不具合とデータハンドリング上の問題により、外国人患者における2例6件※の有害事象(いずれも非重篤、試験薬または投与手技との関連なし)がデータセットに反映されなかった。これらの事象は有害事象の集計に含まれていないものの、安全性の評価に影響はないと判断した。
※
1例[白内障2件(うち1件が試験眼)、硝子体剥離2件(うち1件が試験眼)、および副鼻腔炎1件]、1例[鼻閉1件]
MedDRA ver.25.0