アイリーアを用いたnAMD個別化治療「これから」のT&Eの在り方とは?

取材2020年9月 

監修 大島 裕司 先生 / 安川 力 先生

2つの投与間隔の調節方法(2週幅調節と4週幅調節)におけるアイリーアの有効性および安全性の検討

最高矯正視力文字数の変化量の推移(FAS)

52週における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は、2週幅調節群で+9.0文字、4週幅調節群で+8.4文字であった。

最高矯正視力文字数の変化量の推移(FAS)

96週までの最終投与間隔(FAS)

96週までの最終投与間隔は、約6割の患者において12週以上に延長できていた。

96週までの最終投与間隔(FAS)

安全性(96週、SAS)

すべてのTEAEは2週幅調節群で85例(68.5%)、4週幅調節群で86例(69.9%)であった。

安全性(96週、SAS)

試験薬に関連する重篤な有害事象:白内障2例(2週幅調節群、4週幅調節群 各1例)、脳血管発作1例(4週幅調節群)
試験薬に関連する投与中止に至った有害事象:蕁麻疹1例(4週幅調節群)
試験薬に関連する死亡:本試験において試験薬に関連する死亡は報告されなかった

 

ALTAIR試験 社内資料

 

* 無作為割り付け前脱落の理由は「医師の判断」(n=1)、「通院困難」(n=1)、「試験実施計画書違反」(n=2)、「患者による同意の撤回」(n=3)。
† いずれかの群で確認された眼に関連するTEAE≧2% ‡ いずれかの群で確認された全身性のTEAE≧3% § 2例で3件報告された。
TEAE:Treatment-emergent adverse event APTC:Antiplatelet Trialists' Collaboration
有害事象の報告にはMedDRA version 19.1が用いられた。

ALTAIR試験のTreat and Extend(T&E)レジメンの特徴

ALTAIR試験のTreat and Extend(T&E)レジメンの特徴

ALTAIR試験概要

目的

滲出型AMD患者において、アイリーア硝子体内投与の間隔を最短8週および最長16週として、2つの投与間隔の調節方法(2週幅調節と4週幅調節)における有効性および安全性を検討する。

デザイン

96週、無作為化、多施設共同(国内41施設)、オープンラベル、第Ⅳ相臨床試験

対象

50歳以上で、活動性の中心窩下CNV病変を伴う未治療の滲出型AMD患者(ETDRS視力表による最高矯正視力文字数が73~25文字、スネレン視力20/40~20/320相当)

方法

導入期投与としてアイリーア(アフリベルセプトとして2mg)を3回連続毎月投与後、16週時にT&Eレジメンに基づき、アイリーア2週幅調節群と4週幅調節群に1:1になるよう無作為に割り付けた。4週幅調節群における4週短縮後は、2週間隔で調節した。

評価例数

安全性解析対象集団(SAS):247例(2週幅調節群:124例、4週幅調節群:123例)
最大の解析対象集団(FAS):246例(2週幅調節群:123例、4週幅調節群:123例)

主な評価項目

<主要評価項目>52週時における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量
<副次評価項目>52週時における15文字以上視力が改善した患者の割合、52週時における中心網膜厚(CRT)のベースラインからの変化量、など
<その他の評価項目>96週時における上記の項目
<投与に関する評価項目>平均投与回数、平均投与間隔、最終投与時の投与間隔、など
<安全性評価項目>治療下で発現した有害事象(TEAE)、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡、APTC定義に基づく動脈血栓塞栓事象、など

解析計画

探索的な解析
・主要評価項目、副次評価項目、その他の評価項目、投与に関する評価項目:FAS
・部分集団解析:滲出型AMDの病型別の部分集団解析、16週時点における滲出の有無別の部分集団解析、など
すべての統計解析は探索的であり、検証的な解析は行わなかった。記述的に統計学的な比較を可能とする例数設計に基づき、両群が達成したアウトカムを記述した。なお、欠測値はLOCF法によって補完した。

 

CNV(choroidal neovascularization):脈絡膜新生血管
ETDRS:early treatment diabetic retinopathy study
SAS(safety analysis set):無作為化割り付け前に1回以上試験薬の投与を受けたすべての患者
FAS(full analysis set):無作為化割り付け後に1回以上試験薬の投与を受け、ベースラインと無作為化割り付け後に1回以上の最高矯正視力の評価を受けたすべての患者
TEAE(treatment-emergent adverse event):初回投与から最終投与後30日以内に生じた有害事象
LOCF(last observation carried forward):最終評価スコア外挿法

 

Ohji M, Takahashi K, Okada AA, et al.: Adv Ther. 2020; 37(3): 1173-1187
利益相反:本研究はバイエル薬品の資金によって実施され、同社は試験デザイン作成、試験実施、データ収集、データ管理、データ解析、ならびに原稿作成などに関与した。著者のうち3名は、バイエルヘルスケアAG、バイエル薬品、あるいは参天製薬からコンサルタント料や研究助成金などを受領している。また、著者のうち3名は、バイエル薬品の社員である。

日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験:VIEW2試験VIEW2試験

VIEW2

本剤は海外で実施された第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験の結果および海外第Ⅲ相試験、日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験を基に承認されました承認時に評価されたデータを紹介しますが、一部国内の承認内容と異なる成績が含まれています。

アイリーアのラニビズマブに対する非劣性の検証

52週目に視力が維持※1された患者の割合(主要評価項目)(LOCF、PPS)

 

※1: ETDRS視力表による最高矯正視力文字数のベースラインからの低下が15文字未満

アイリーア投与群で95.6~96.3%であった。ラニビズマブ投与群との群間差※2の両側95%信頼区間の上限は、いずれも2.6%以下で非劣性限界値(10%)を下回ったことから、アイリーアのすべての投与群でラニビズマブ投与群に対する非劣性が検証された。

※2: ラニビズマブ投与群-各アイリーア投与群(信頼区間は正規近似を用いた)

最高矯正視力文字数の推移(LOCF、FAS)

アイリーア投与群では、52週時+7.6~9.7文字、96週時+6.0~8.1文字の視力変化が認められた

※【副次評価項目の結果】 最高矯正視力文字数の52週時におけるベースラインからの変化量について、アイリーア2mg4週ごと投与群のラニビズマブ 投与群に対する優越性は検証されなかった。

最高矯正視力文字数の推移(LOCF、FAS)

ベースライン値からのCRTの変化量(LOCF、FAS)

ベースライン値からのCRTの変化量(LOCF、FAS)

安全性(2年間の有害事象発現率;SAF)VIEW1試験 VIEW2試験

logo

国内外で実施された第Ⅲ相試験[VIEW1試験、VIEW2試験の併合解析(2年間)]において、副作用*1は、アイリーア投与群a)に割り付けられた1,824例中896例(49.1%)、ラニビズマブ投与群で595例中311例(52.3%)に認められた。
主な副作用は、アイリーア投与群で結膜出血480例(26.3%)、眼痛158例(8.7%)、眼圧上昇89例(4.9%)、ラニビズマブ投与群で結膜出血171例(28.7%)、眼痛54例(9.1%)、眼圧上昇39例(6.6%)などであった。

第Ⅲ相試験:VIEW1試験(海外データ)試験概要
【対象】 中心窩下CNVを伴う滲出型AMD患者1,217例 【方法】 VIEW2試験に同じ

承認時評価資料

VIEW2試験における試験薬に関連する重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡など

試験薬に関連する試験眼の重篤な有害事象

アイリーア投与群:4例(0.4%)[網膜出血、視力低下、網膜色素上皮裂孔、白内障(各1例)]
ラニビズマブ投与群:1例(0.3%)[網膜色素上皮裂孔(1例)]

試験薬に関連する全身性の重篤な有害事象

アイリーア投与群:9例(1.0%)[脳血管発作(3例)、一過性脳虚血発作、急性冠動脈症候群、ラクナ梗塞、心筋梗塞、虚血性脳卒中、腎不全(各1例)]
ラニビズマブ投与群:0例

APTC定義による動脈血栓塞栓事象b)

アイリーア投与群:非致死性心筋梗塞13例(1.4%)、血管死11例(1.2%)、非致死性脳卒中5例(0.5%)
ラニビズマブ投与群:非致死性心筋梗塞4例(1.4%)、非致死性脳卒中2例(0.7%)、血管死1例(0.3%)

試験薬に関連する投与中止に至った有害事象

アイリーア投与群:脳血管発作*2(3例)、黄斑変性、視力低下、網膜出血、薬疹、急性冠動脈症候群、ラクナ梗塞、虚血性脳卒中、腎不全、歩行障害*2、会話障害*2(各1例)
ラニビズマブ投与群:0例

試験薬に関連する死亡

アイリーア投与群:脳血管発作、虚血性脳卒中(各1例)
ラニビズマブ投与群:0例

a)アイリーア2mg4週ごと、0.5mg4週ごと、2mg8週ごと投与群の3群合算により検討
b)すべての有害事象のうち、APTC(Antiplatelet Trialists’ Collaboration)定義により判定された動脈血栓塞栓事象
*1 投与手技に起因する有害事象を含む。添付文書に準じ、併合での集計結果を記載した。
*2 脳血管発作の1例と歩行障害および会話障害は同一症例

VIEW2試験概要

目的

中心窩下CNVを伴う滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者を対象として、アイリーアの有効性についてラニビズマブ0.5mg4週ごと投与に対する非劣性を検証するとともに、安全性および忍容性についても検討する。

試験デザイン

無作為化二重遮蔽実薬対照比較試験

試験対象

中心窩下CNVを伴う滲出型AMD患者1,240例(うち日本人:101例)
インド、アジア太平洋地域(日本含む)、オーストラリア、欧州連合、ラテンアメリカ、イスラエルの26ヵ国、186施設
[主な選択基準]
・試験眼において、FAにより確認されたAMDに伴う初発の中心窩下CNVの活動性病変(傍中心窩CNV病変を含む)を有する50歳以上の男女
・CNV病変面積が病変全体の50%以上
・試験眼のETDRS視力表による最高矯正視力文字数が73~25文字(スネレン視力で20/40から20/320) など

投与方法

対象患者を、アイリーア2mg4週ごと投与群、0.5mg4週ごと投与群、2mg8週ごと投与群、およびラニビズマブ0.5mg4週ごと投与群の4群に無作為に割り付け、硝子体内投与を行った。治療開始時は全群4週ごと投与を3回連続行い、その後は各群の投与スケジュールに従い投与した(固定投与期)。52週経過後は、各群ともに投与間隔を12週に1回を基本とし、再投与基準に合致した場合は、それ以前(4週あるいは8週)に投与できることとした(Modified Quarterly Dosing期)。

主な有効性・評価項目

▪主要評価項目:52週目に視力が維持(ETDRS視力表による最高矯正視力文字数の低下が15文字未満)された患者の割合
▪副次評価項目:以下の項目の52週目におけるベースラインからの変化量(①最高矯正視力文字数、②視力が改善(最高矯正視力文字数が15文字以上増加)した患者の割合、③NEIVFQ-25合計スコア、④CNV病変面積)
▪追加評価項目:CRTの変化量 など
▪探索的評価項目:96週目(2年目)終了時のすべての評価†

主な安全性・評価項目

有害事象、副作用、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡、APTC定義による動脈血栓塞栓事象 など

解析計画

▪検証的な解析
主要評価項目(PPS):アイリーア投与群のラニビズマブ投与群に対する非劣性の検証(限界値‡10%)。検定の多重性を考慮し、事前に定めた順序(アイリーア2mg4週ごと投与群、アイリーア0.5mg4週ごと投与群、アイリーア2mg8週ごと投与群)に従い検定を行う。
副次評価項目(FAS):アイリーア投与群のラニビズマブ投与群に対する優越性の検証。ただし、検定の多重性を考慮し、すべてのアイリーア投与群において、主要評価項目で非劣性が検証された場合に限り、事前に定めた順序(アイリーア2mg4週ごと投与群の①②③、アイリーア0.5mg4週ごと投与群の①②③、アイリーア2mg8週ごと投与群の①②③、各群の④)に従い検定を行う。
▪探索的な解析
追加評価項目(FAS)
探索的評価項目(FAS)
部分集団解析:日本人集団の部分集団解析 など

 

承認時評価資料

 

†:92週目に再投与が行われた患者では、100週目の結果を最終評価として用いた(CNV病変面積、NEI VFQ-25合計スコア、CRT)
‡:両側95%信頼区間

 

CNV(choroidal neovascularization):脈絡膜新生血管
NEI VFQ-25(National Eye Institute 25-item Visual Function Questionnaire):米国国立眼病研究所の25項目からなる視覚機能についてのアンケート
CRT(central retinal thickness):中心網膜厚

 

PPS(per protocol set):治験実施計画書に適合した患者集団
FAS(full analysis set):最大の解析対象集団
SAF(safety analysis set):安全性解析対象集団

日本におけるアフリベルセプトの用法及び用量〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、通常、2ヵ月ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以上あけること。

日本におけるラニビズマブの用法及び用量〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症〉
ラニビズマブ(遺伝子組換え)として0.5mg(0.05mL)を1ヵ月毎に連続3ヵ月間(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期においては、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以上の間隔をあけること。

大島 裕司 先生 コメント

アイリーアは眼内の血管新生に主要な役割をもつVEGF-Aのみならず、PlGFやVEGF-Bといった他のVEGFファミリーのシグナルも阻害するユニークな機序をもち、眼内において抗VEGF活性の持続性を有すると考えられます1)。 また、ALTAIR試験でも検討されていますが、個々の患者の病態や視力低下リスクに応じてT&Eを選択するなど、多様な個別化治療を実現できる可能性をもつ薬剤であると考えます。

 

ALTAIR試験において重要なのは、投与間隔を延長できた患者と延長できなかった患者の割合です。96週時点において最小投与間隔(8週)であった患者の割合は33.3~37.4%でしたが、22.0~27.6%は一度も延長できなかった患者です。この一度も延長できなかった患者の中には、投与間隔を8週未満に短縮した方が良かった患者が含まれている可能性があります。また、最大投与間隔(16週)での治療が可能であった患者も40%以上存在し、12週以上の投与間隔であった患者の割合は約60%という結果が示されました2)

 

長期に視力を維持するうえでT&Eによって12週あるいは16週ごとの投与が可能となった症例については、ある時期より休薬を考慮することもあるかと思います。当科においても、16週を連続3回達成した患者さんと相談のうえ休薬し、経過観察とする例もあります。休薬については個々の患者の社会的背景や僚眼の状態などを充分に考慮して検討する必要があり、治療間隔の調節や休薬を含めて治療を個別化していくことが重要であると考えます。

安川 力 先生 コメント

ALTAIR試験では、通常のT&Eのような投与間隔の延長と短縮の基準の他、滲出液の残存がある場合でも、前回投与からの減少が認められるのであれば投与間隔を維持するという基準が追加されました。
ラニビズマブによるT&Eを検討したFLUID試験では、網膜内液(IRF)と網膜下液(SRF)の消失を目指してラニビズマブの投与間隔を調節するIntensive群と、200µm以下の中心窩下SRFやその他の部位のSRFは許容して投与間隔を調節するRelaxed群における有効性および安全性が検討されています3)。また、CATT試験の5年成績においてもSRFをはじめ各因子の視力への影響が検討されていますが、これら複数の検討から、抗VEGF治療を行ってもなお残存するSRF所見は視力への影響が少ない可能性が示唆されています4)

 

VIEW2試験では、アイリーア2mg8週ごと投与群の維持期の投与と投与の間において、CRTの変化量の平均値に変動が認められていますが、視力の変化量の平均値については同様の変動は見られていません。さらに、VIEW2試験の事後サブ解析では網膜内浮腫(IRC)(IRFと同義)、SRF、色素上皮剥離(PED)の有無別での検討も行われていますが、IRCは視力予後不良因子である一方で、SRFは視力良好因子である可能性が示唆されています5)

 

以上のことから、アイリーア8週ごと投与やT&Eによる治療が継続されている状態においては、残存するSRFによる視力への影響は少ないのではないかと考えています。ただし、出血や硬性白斑を伴うような場合は視力への影響が懸念されますので、注意が必要だと考えています。

関連情報

1) Stewart MW. et al., Br J Ophthalmol. 2008; 92(5): 667-668
2) Ohji M. et al., Adv Ther. 2020; 37(3): 1173-1187
3) Guymer RH. et al., Ophthalmology. 2019; 126(5): 723-734
4) Jeff GJ. et al., Ophthalmology. 2019; 126(2): 252-260
5) Waldstein SM. et al., Ophthalmology. 2016; 123(7): 1521-1529