ROPの診断
未熟児網膜症の病期分類
ROPは3~4ヵ月ほどの限定的な短期間に病的血管新生の活動が活発になり、のちに自然に停止し鎮静化するのが特徴です1)。
ROPの病期は2つに分けられ、増殖が進行している状態を 「活動期」 、鎮静化した後、眼底に後遺症が残った状態を 「瘢痕期」 といいます1)。
病期分類には「厚生省未熟児網膜症研究班による分類」と「国際分類」があり、活動期については国際分類が、瘢痕期については厚生省未熟児網膜症研究班による分類が主に用いられています2)。
1. 厚生省未熟児網膜症研究班による分類2)
病期について記載されており、活動期病変の位置や範囲については記載されていない 。
「瘢痕期分類」が記載されており、活動期と同様に瘢痕の程度を段階的に分類している。
2. 国際分類(International Classification of Retinopathy of Prematurity, ICROP)2)
眼底を3つのzoneに分け、血管の伸展度によって重症度をある程度予測できる。
病変の位置や範囲を表現する方法も記載されており、「活動期分類」として有用である。
活動期の網膜症を位置(location)、病期(stage)、plus diseaseの有無によって分類している。
寛解期における瘢痕についての記載はあるが、瘢痕期を段階的に分類した記載はない。
国際分類(ICROP、第3版)における活動期の概要3,4)
2乳頭径幅:乳頭直径の2倍の長さ
1)東範行(編):未熟児網膜症, 三輪書店, 2018 第1章
2)東範行(編):未熟児網膜症, 三輪書店, 2018 第3章
3)Chiang MF, et al.: Ophthalmology. 2021; 128: e51-e68.
4)日本小児眼科学会:未熟児網膜症国際分類の改訂(2021年)<20220126.pdf (japo-web.jp)>(参照 2023年11月)
未熟児網膜症の検査1)
ROPの検査では、主に眼底検査が用いられます。
眼底検査のスクリーニング対象は国ごとに異なり、日本では在胎34週以前または出生体重1800g以下(1975年厚生省研究班)2)とされていますが、現状では各施設の判断で行われています。
ROPの診断、病期の判定、治療適応や経過観察の検討にあたり、眼底検査による所見や眼底写真で不十分な場合、超音波Bモード検査、光干渉断層法(OCT)、レーザー走査広角眼底検査などが診断補助として用いられます。
超音波Bモード検査は網膜剥離の有無の確認に有用であり、OCTは小児では撮影の協力を得ることが難しく限られた場合でのみ実施されますが3)、眼底検査に非協力的な瘢痕期の年長児に生じたstage4を確認するには、超音波Bモード検査と同様に有用な場合があります4、5)。
レーザー走査広角眼底検査は検査に非協力的な年長児の経過観察において通常の眼底検査と写真撮影の代替として使用されることがあります5、6)。
眼底検査
画像提供:産業医科大学 眼科学教室 教授 近藤 寛之 先生
1)東範行(編): 未熟児網膜症, 三輪書店, 2018 第2章
2)植村恭夫ほか:日本の眼科. 1975; 46: 553-559.
3)田中慎:眼科グラフィック. 2019; 8: 195-201.
4)Joshi MM, et al.: Ophthalmology. 2006; 113: 657-660.
5)Patel CK: Am J Ophthalmol. 2006; 141: 582-584.
6)Arnold RW, et al.: Ophthalmic Surg Lasers Imaging Retina. 2017; 48: 494-497.