患者さんの治療ニーズに基づく視力達成に向けた治療方法

nAMD患者における未治療時点での最高矯正視力の推移

nAMD患者における未治療の最高矯正視力(多施設共同研究:J-CREST group)

グラフは片眼視力を記載(対象が片眼の症例となっている)

対象

J-CRESTに参加する病院において2006年1月~2015年12月にnAMDの初期治療を受けた未治療のnAMD患者3,096例3,096眼

方法

多施設共同後ろ向きケースシリーズ研究。診療録を遡及的にレビューし、ベースライン時の最高矯正視力の10年間の変化を調査した。
2006年から2015年までの変化を評価するためにKruskal-Wallis検定を用いた。

利益相反

著者にバイエル薬品、参天製薬より助成金、コンサルタント料などを受領している者が含まれる。

Sawada T, et al.: Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2021; 259: 1191-1198.

J-CREST:Japan Clinical Retina Study

患者さんの日常生活に必要な視力

患者さんの日常生活に必要な視力

表は両眼視力を記載(補足説明があるものを除く)

所敬: 視覚の科学. 2007; 28: 55-59より作表

抗VEGF薬の投与方法を選択する上で、患者が最も重視した項目は「2年目の視力維持」でした

wAMD患者を対象とした選好研究において患者が最も重視した項目

wAMD患者を対象とした選好研究において患者が最も重視した項目
対象

良い方の小数視力が0.5以上であり、日本語を読んで理解し、調査を完了することができる50歳以上の抗VEGF薬による治療を受けている滲出型加齢黄斑変性(wet age-related macular degeneratio n;wAMD)患者120例

方法

抗VEGF薬の投与方法を選択する上で、患者が重視する項目についてアンケート調査を実施した。①1年目の投与回数 ②1年目の診察回数 ③1年目の視力改善率(15文字以上増加した患者の割合) ④2年目の視力維持率(15文字以上の低下を回避した患者の割合)の4つの項目について、どの項目を相対的に重視するかを調査した。

利益相反

本研究はバイエル薬品の資金により行われた。本論文の著者のうち、2名はバイエル薬品、1名はバイエルコンシューマーケアの社員である。
著者にバイエル薬品および参天製薬より謝礼を受領している者が含まれる。

Joko T, et al.: Patient Preference and Adherence. 2020; 14: 553 -567.
Reprinted with permission from the original publisher Dove Medi cal Press Ltd.

nAMDの個別化治療には、個々の患者に合わせてプロアクティブに投与間隔を変更する「T&E」と病態の悪化に合わせてリアクティブに投与する「PRN」があります

nAMDにおける抗VEGF薬の投与方法

nAMDにおける抗VEGF薬の投与方法

監修:滋賀医科大学医学部 眼科学講座 教授 大路 正人 先生

PRN:pro re nata

PCVはアジア人に多く、日本人においてもwAMD患者の23-55%がPCVであると報告されており、wAMDの治療を考える上で重要なサブタイプです

PCVと診断されたwAMD患者の割合1)

PCVと診断されたwAMD患者の割合

1)Honda S, et al.: Ophthalmologica. 2014; 231: 59‒74.
2)Sho K, et al.: Arch Ophthalmol. 2003; 121: 1392-1396.
3)Hayashi H, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010; 51: 5914‒5919.
4)Maruko I, et al.: Am J Ophthalmol. 2007; 144: 15-22.
5)Chang YC, et al.: Ophthalmic Surg Lasers Imaging. 2009; 40: 576‒581.

6)Wen F, et al.: Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2004; 242: 625‒629.
7)Liu Y, et al.: Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2007; 245: 1441‒1445.
8)Song SJ, et al.: Ophthalmic Epidemiol. 2009; 16: 304‒310.
9)Byeon SH, et al.: Jpn J Ophthalmol. 2008; 52: 57‒62.
10)Ciardella AP, et al.: Surv Ophthalmol. 2004; 49: 25‒37.

PCV(polypoidal choroidal vasculopathy):ポリープ状脈絡膜血管症


PCVを対象とした初回PDT併用のアイリーアT&E投与とPRN投与の前向き比較試験(海外データ)

Rouvas A, et al.: Eur J Ophthalmol. 2021(Epub ahead of print)
https://doi.org/10.1177/11206721211014717

試験概要

目的

PCVに対するアイリーアによるT&E投与およびPRN投与の1年間の治療成績を、視力、ポリープ状病巣の再発および線維化の発現・進行、並びに硝子体内投与回数によって比較し、PCVに対する維持期の投与方法はどちらが望ましいかを判定する。

試験対象

単施設、前向き、無作為化、オープンラベル試験

試験デザイン

未治療のPCV患者38例38眼(2015~2018年にアテネ医科大学にて試験実施)
[除外基準]
・PCVに対して何らかの治療歴がある
・強度近視におけるCNVを有する
・wAMDに伴うCNVを有する
・網膜血管疾患を有する
・直近2ヵ月未満に眼内手術が行われた
・活動性のある眼内炎を有する

投与方法

導入期として、初回PDTの併用によるアイリーア(アフリベルセプトとして2mg)硝子体内投与を3回毎月実施した。導入期後、滲出性変化(SRFの消失、PEDの部分的消失または完全消失)がみられたPCV患者30例30眼を本試験の解析対象とし、維持期としてT&E群(14例)、PRN群(16例)に無作為に割り付けた。T&E群は再発※1を基準に2週幅で投与間隔を調節した(最長3ヵ月)。PRN群は月1回検査を行い、再発が認められた時に再投与を行った。PDTはアイリーア初回投与1週後に施行した(ポリープ状病巣に対して照射し、異常血管網は照射の範囲に含めなかった)。

評価項目

視力、投与回数、再発回数および線維化の発現・進行※2

解析計画

連続変数の平均値の群間比較はstudent‘s t検定を用いて評価し、ノンパラメトリックデータはMann-Whitney U検定を用いて評価した。
最高矯正視力はlogMAR値に換算し、6ヵ月後と12ヵ月後の視力の群内および群間の評価は対応のあるt検定を用いて評価した。

利益相反

本研究の著者は、本論文の研究、執筆、出版に関する利益相反はなく、金銭的支援も受けていない。

CNV(choroidal neovascularization):脈絡膜新生血管
PDT(photodynamic therapy):光線力学的療法
SRF(subretinal fluid):網膜下液
PED(retinal pigment epithelium detachment):網膜色素上皮剥離

※1 OCT上でSRFが認められる、および/または、消失したPEDの再発(rePED)
※2 線維化の進行の定義:既存の線維化が中心窩まで拡大した場合

T&E群において、12ヵ月後の視力はベースラインよりも有意に改善し、ベースラインからの変化量は、PRN群よりも有意に大きかったことが示されました

最高矯正視力の推移

最高矯正視力の推移

最高矯正視力のベースラインからの変化量

最高矯正視力のベースラインからの変化量

Rouvas A, et al.: Eur J Ophthalmol. 2021 (Epub ahead of print )より作図

維持期の投与回数はT&E群で6回、PRN群で5.13回であり、線維化の発現・進行はT&E群で0%、PRN群で44%でした

維持期の投与回数

維持期の投与回数

student t検定

平均値±標準偏差

線維化の発現・進行

線維化の発現・進行

student t検定

安全性:論文中に安全性に関する記載がありませんでした
(安全性情報は「アイリーアについて」をご参照ください)


PLANET試験(日本人を含む第Ⅲb/Ⅳ相国際共同試験)

1)Lee WK, et al.: JAMA Ophthalmol, 2018; 136: 786-793.
2)Wong TY, et al.: Am J Ophthalmol, 2019; 204: 80-89.
3)Ogura Y, et al.: Jpn J Ophthalmol. 2021; 65: 344-353.

試験概要1、2)

PLANET
目的

PCV患者における、アイリーア単独療法の有効性および安全性を、アイリーア+光線力学的療法(レスキューPDT)と比較検討する。

試験デザイン

観察期間96週間、無作為化、二重遮蔽、第Ⅲb/Ⅳ相試験

試験対象

以下に該当する患者333例(うち、日本人は159例)
・PCVと診断された50歳以上の患者
・病変最大径(GLD)が5,400µm未満であるか9乳頭面積(DA)未満の患者
・最高矯正視力(BCVA)がETDRSで73~24文字の患者

投与方法

・本試験は以下の期間により構成される。
導入期:0~8週目
無作為割り付け:12週目
治療継続期:12~52週目(アイリーア2q8±レスキュー治療)、52~96週目(Treat & Extend※±レスキュー治療)
・導入期には全ての患者にアイリーアの毎月投与を3回行う。
・12週目にアイリーア単独療法群、PDT併用療法群のいずれかに1:1の割合で無作為に割り付ける。その際、12週時点でレスキュー治療が必要と評価された患者、および日本人患者が均等に含まれるように割り付ける。(12週時点でレスキュー治療が必要となる患者が各群50名程度であると想定)
・レスキュー治療が不要と評価された患者には52週目までアイリーアを8週ごとに投与する。
・12週目以降、レスキュー治療が必要と評価された患者には、アイリーア単独療法群ではアイリーアの4週ごと投与とシャムPDTによるレスキュー治療を、PDT併用療法群ではアイリーア4週ごと投与と実薬PDTによるレスキュー治療を行う。

評価項目

<主要評価項目>
・52週時におけるBCVAのベースラインからの変化量
<副次評価項目>
・52週時におけるベースラインから15文字以上の視力低下がみられなかった患者の割合
<探索的評価項目>
・96週時におけるBCVAのベースラインからの変化量
・96週時におけるベースラインから15文字以上の視力低下がみられなかった患者の割合
・52週時および96週時における中心サブフィールド網膜厚(CST)のベースラインからの変化量
・52週時および96週時におけるポリープ状病巣の完全退縮率
・アイリーアおよびPDTによる治療回数 
・レスキュー治療を必要とした患者の割合 など
<安全性評価項目>
・すべての有害事象、TEAE、重篤な有害事象、APTC定義に基づく動脈血栓塞栓事象、死亡 など
<事前に規定された評価項目(部分集団解析)>
・レスキュー治療の有無別でみたBCVAのベースラインからの変化量
・日本人集団における上記のすべての有効性評価項目、および安全性評価項目 など

解析計画

<検証的な解析>
・主要評価項目(FAS):アイリーア単独療法のPDT併用療法に対する非劣性の検証。変化量の最小二乗平均の群間差(アイリーア単独療法群-PDT併用療法群)の両側95%信頼区間を、ベースライン値を共変量とし、投与群、民族、および12週目におけるレスキュー治療の有無を固定効果とした共分散分析により求める。(非劣性限界値:ETDRS‒5文字)
・副次評価項目(FAS):アイリーア単独療法のPDT併用療法に対する非劣性の検証。主要評価項目の検証により非劣性が認められた場合に、ベースラインからETDRS15文字以上の視力低下がみられなかった患者の割合を確認し、群間差の95%信頼区間を人種/民族および12週目におけるレスキュー治療の有無により調整されたCochran-Mantel-Haenszelにより求める。(非劣性限界値:‒7%)
<探索的な解析>
・探索的評価項目(FAS)、安全性評価項目(SAF)、部分集団解析(FAS)
・参考として、52週時および96週時における活動性のあるポリープが認められない患者の割合(SAF)を算出する。
なお、欠損値の代入にはLOCFを用いる。

利益相反

本試験および本論文の執筆・編集はBayer AG, Berlinの資金提供により行われた。
著者のうち2名はBayerの社員であり、その他の著者にBayerおよび参天製薬より助成金、個人的報酬を受領している者が含まれる。

※:治験担当医の裁量により、1週または2週単位で投与間隔を延長する任意Treat & Extend

ETDRS:Early Treatment Diabetic Retinopathy Study
FAS(Full Analysis Set):最大の解析対象集団
SAF(Safety Analysis Set):安全性解析対象集団
TEAE(Treatment-Emergent Adverse Event):治療下で発現した有害事象
APTC:Antiplatelet Trialists’ Collaboration
LOCF(Last Observation Carried Forward):最終評価スコア外挿法

96週における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は、日本人集団のアイリーア単独療法群で+9.7文字、PDT併用療法群で+9.5文字でした

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量1、3)

FAS(LOCF)

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量

全集団、日本人集団ともに、アイリーア単独療法群、PDT併用療法群のいずれも、要レスキュー治療群、レスキュー治療不要群を含む。

▶主要評価項目(52週、全集団)の結果

アイリーア単独療法群のPDT併用療法群に対する非劣性が検証されました

※:ベースライン値を共変量とし、投与群、民族、および12週目におけるレスキュー治療の有無を固定効果とした共分散分析。
(52週時における非劣性限界値:ETDRS‒5文字)

日本人集団における96週間を通じてレスキュー治療を必要とした患者の割合は、アイリーア単独療法群で18.7%、PDT併用療法群で15.6%でした

レスキュー治療を必要とした患者の割合(96週:日本人集団)3)

FAS

レスキュー治療を必要とした患者の割合(96週:日本人集団)3)

日本人集団において、すべてのTEAEはアイリーア単独療法群75例中58例(77.3%)、PDT併用療法群77例中54例(70.1%)に認められました

安全性(96週:日本人集団)3)

SAF

安全性(96週:日本人集団)
安全性(96週:日本人集団)

*:治療を受けたが、プロトコルの逸脱、有害事象、脱落、死亡、または追跡不能により12週目に無作為化されなかったすべての患者

アイリーア投与(手技を含む)に関連する有害事象
※1:不整脈 1例、上部消化管出血 1例、冠状動脈狭窄症・白内障 1例(2件);
※2:網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)1例;※4:心臓突然死 1例;※5:RPE tear 1 例;※6:不整脈 1例
ベルテポルフィン投与(手技を含む)に関連する有害事象
※3:視力低下 1例

(PLANET試験 社内資料)

文献

1) Wong TY, et al. Am J Ophthalmol. 2019; 204: 80-89.
2) Rofagha S, et al. Ophthalmology. 2013; 120(11): 2292-2299.
3) Kuroda Y, et al. Ophthalmology. 2015; 122: 2303-2310.
4) Grunwald JE, et al. Ophthalmology. 2014; 121: 150-161.
5) Chakravarthy U, et al. Lancet. 2013; 382: 1258-1267.
6) Ohnaka M, et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2017; 255: 657-664.
7) Ohji M, et al. Adv Ther. 2020; 37: 1173-1187.
8) Schmidt-Erfurth U, et al. Prog Retin Eye Res. 2016; 50: 1-24.
9) Waldstein SM, et al. Ophthalmology. 2016; 123: 1521-1529.
10) Sharma S, et al. Ophthalmology. 2016 ; 123(4): 865-875.
11) Guymer RH, et al. Ophthalmology 2019; 126: 723-734.