今、そしてこれから、求められる個別化治療とは~nAMD編~
現在の環境下における理想的な個別化医療

Ophthalmology Web Conference
開催日:2021年8月5日

山城 健児 先生

山城 健児 先生

高知大学医学部眼科学講座 教授

滲出型加齢黄斑変性治療と抗VEGF薬治療レジメン

滲出型加齢黄斑変性(nAMD)の治療は抗VEGF薬治療が現在の主流となっており、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)以外の症例に対しては、光線力学的療法(PDT)を用いることは減ってきている。PCVに対してアフリベルセプト単独治療とアフリベルセプト+PDTによるレスキュー療法を比較したPLANET試験1)では、2年間の治療中にPDTによるレスキュー療法を必要とした患者の割合は約17%であったことが示されており、PCVにおいても多くの症例で抗VEGF薬単独治療によるコントロールが可能であると考えられる。

抗VEGF薬の治療レジメンにはFixedレジメン、Pro-renata(PRN)レジメン、Treat and Extend(T&E)レジメンの3種類が用いられている。

Fixedレジメンは、導入期に3回毎月投与を行った後は一定の間隔(毎月または2~3ヵ月ごと)で定期的な投与を継続する方法である。滲出性変化の十分なコントロールが得られない場合には、2ヵ月ごとの投与を毎月投与へ、3ヵ月ごとの投与を2ヵ月ごとの投与へと調整する必要がある。PRNレジメンは、導入期の後は毎月診察を行い、滲出性変化が認められた際に追加投与を行う投与方法である。

いわゆる3+PRNレジメンとして、導入期に3回毎月投与を行い、その後は病態の悪化に応じて追加投与を行う方法が主流となっている。本レジメンは適切な追加投与ができれば視力の維持が可能と考えられるが、日常診療においては、患者が注射を希望しないなどの理由で投与が遅れる場合があり、長期的には視力が低下したという報告もある2)

Fixedレジメンは、定期的な投与の継続が前提となっているため投与の遅れは少ない。一方、導入期3回毎月投与後にPRNレジメンで経過観察を続けた結果、およそ1/4の症例では2年後まで再発を認めなかったことが報告3)されていることから、全ての患者に対してFixedレジメンを継続すると多くの症例で過剰投与となる可能性があり、さらに黄斑萎縮についても注意が必要となる。例えば海外の複数の臨床試験で、PRNレジメンに比べてFixedレジメンの方が黄斑萎縮のリスクが高いという結果が報告されている4,5)。中心窩を含む範囲が萎縮すると、治療によって滲出性の変化を消退させても視力は大幅に低下することになる。黄斑萎縮と抗VEGF治療との関連性については議論が残るところであるが、Fixedレジメンでは特に、過剰投与に注意する必要がある。

それに対して、最近注目を集めているのがT&Eレジメンである(図1)。T&Eレジメンでは導入期に3回毎月投与を行い、以降の診察時には毎回投与を行う。その際、診察および投与の間隔をできるだけ延長していき、各患者に最適な投与間隔で継続することを目標とする。治療中に滲出性変化のコントロールが不十分となった場合は、次回の診察および投与までの間隔を短縮する。その後、可能であれば再び間隔の延長を目指していくが、改善がみられない場合はさらに投与間隔を短縮する場合もある。投与間隔の調節幅はおおむね2週または4週であり、最大投与間隔は12週、あるいは16週と施設の方針によって設定が異なる。

図1 Treat and extend(T&E)レジメン

図1 Treat and extend(T&E)レジメン

提供 大津赤十字病院 山城健児先生

最大投与間隔である12週あるいは16週の投与間隔で投与を継続すると、やはり一部の症例では治療継続中に過剰投与になりうる可能性がある。そこで、導入期後にdryになった症例に対しては、まず再発するまでは追加投与を行わずに経過観察を行い、その後は再発までの期間を参考にしてT&E投与を行う、modifi ed T&Eレジメンも注目されている6)

これらの結果をまとめると、抗VEGF薬の治療レジメンに関してはT&Eやmodifi ed T&Eが望ましいと考えられる。Fixedレジメンでは黄斑萎縮のリスクがあること、PRNレジメンでは追加投与が遅れる可能性があることなどから、いずれも視力低下のリスクが課題となる。PRNレジメンは適切に追加投与を行えば理想的な治療レジメンであるが、実際には継続が困難な場合もあり、最近はT&Eレジメンで治療する施設が増えていると思われる。

T&Eレジメンによるアフリベルセプト治療:ALTAIR試験

国内第IV相試験であるALTAIR試験7)は、アフリベルセプトを用いたT&Eレジメンにおいて投与間隔の調節を2週間隔または4週間隔で行い、それぞれの調節方法(2週幅調節群、4週幅調節群)における有効性および安全性を検討することを目的に実施された(図2)

図2 ALTAIR試験のT&Eレジメンの特徴

図2 ALTAIR試験のT&Eレジメンの特徴

*1 OCTによる評価
*2 中心窩を中心とした直径1mmのサブフィールド内
*3 網膜内あるいは網膜下
*4 OCTスキャン領域全体
CRT, central retinal thickness; CNV, choroidal neovascularization; OCT, optical coherence tomography.

Ohji M et al. Adv Ther. 2020; 37: 1173-1187.

投与間隔の短縮、維持、延長の判断基準は、2週幅調節群、4週幅調節群のいずれも、滲出液に変化がない、または増加している場合は短縮、減少していれば維持、滲出液を認めない場合は延長された(滲出液の変化以外の短縮基準は図2参照)。最短投与間隔は8週間、最長投与間隔は16週間である。

試験の結果、52週時における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は、2週幅調節群で+9.0文字、4週幅調節群で+8.4文字であった(図3)。治療を終了した96週時点では、それぞれ+7.6文字および+6.1文字となった。また52週時のCRTの変化量は、2週幅調節群で-134.4μm、4週幅調節群で-126.1μm、96週時はそれぞれ-130.5μm、-125.3μmであった(図3)

96週時点における投与間隔は全体の約35%が8週間隔であった一方で、約60%では12~16週の投与間隔であった。約60%の症例では12週以上の投与間隔で滲出性変化の良好なコントロールが得られていたと考えられる(図4)

図3 ALTAIR試験:最高矯正視力文字数とCRTのベースラインからの変化量の推移

図3 ALTAIR試験:最高矯正視力文字数とCRTのベースラインからの変化量の推移

各群の平均値(95%CI)は1標本t統計量、群間差は投与群とnAMDの病型を固定効果、ベースライン最高矯正視力文字数を共変量としたANCOVAモデル、およびベースラインCRTを共変量としたANCOVAモデルによってそれぞれ算出した。欠測値はLOCF法によって補完した。
ANCOVA:analysis of covariance、LOCF(last observation carried forward):最終評価スコア外挿法

Ohji M et al. Adv Ther. 2020; 37: 1173-1187.

図4 ALTAIR試験:96週までの最終投与間隔

図4 ALTAIR試験:96週までの最終投与間隔

Ohji M et al. Adv Ther. 2020; 37: 1173-1187.

 

ALTAIR試験(国内第Ⅳ相試験)

試験概要

目的

nAMD患者において、アイリーア硝子体内投与の間隔を最短8週および最長16週として、2つの投与間隔の調節方法(2週幅調節と4週幅調節)における有効性および安全性を検討する。

対象

50歳以上で、活動性の中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変を伴う未治療nAMD患者(ETDRS視力表による最高矯正視力文字数が73~25文字、スネレン視力20/40~20/320相当)

試験デザイン

96週、無作為化、多施設共同(国内41施設)、オープンラベル、第Ⅳ相臨床試験

投与方法

導入期投与としてアイリーア(アフリベルセプトとして2mg)を3回連続毎月投与後、16週時にT&Eレジメンに基づき、アイリーア2週幅調節群と4週幅調節群に1:1になるよう無作為に割り付けた。4週幅調節群における4週短縮後は、2週間隔で調節した。

評価例数

安全性解析対象集団(SAS*1):254例(2週幅調節群:124例、4週幅調節群:123例、無作為化割り付け前脱落:7例)
最大の解析対象集団(FAS*2):246例(2週幅調節群:123例、4週幅調節群:123例)

評価項目

主要評価項目:52週時における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量
副次評価項目:52週時における15文字以上視力が改善した患者の割合、52週時における中心網膜厚(CRT)のベースラインからの変化量、など
その他の評価項目:96週時における上記の項目
投与に関する評価項目:平均投与回数、平均投与間隔、最終投与時の投与間隔、など
安全性評価項目:治療下で発現した有害事象(TEAE*3)、すべての有害事象、など

解析計画

探索的な解析

  • 主要評価項目、副次評価項目、その他の評価項目、投与に関する評価項目:FAS
  • 安全性評価項目:SAS
  • 部分集団解析:nAMDの病型別の部分集団解析、16週時点における滲出の有無別の部分集団解析、など

すべての統計解析は探索的であり、検証的な解析は行わなかった。記述的に統計学的な比較を可能とする例数設計に基づき、両群が達成したアウトカムを記述した。なお、欠測値はLOCF法によって補完した。

利益相反

本研究はバイエル薬品の資金によって実施され、同社は試験デザイン作成、試験実施、データ収集、データ管理、データ解析、ならびに原稿作成などに関与した。著者のうち3名は、バイエルヘルスケアAG、バイエル薬品、あるいは参天製薬からコンサルタント料や研究助成金などを受領している。また、著者のうち3名は、バイエル薬品の社員である。

*1:無作為化割り付け前に1回以上試験薬の投与を受けたすべての患者
*2:無作為化割り付け後に1回以上試験薬の投与を受け、ベースラインと無作為化割り付け後に1回以上の最高矯正視力の評価を受けたすべての患者
*3:初回投与から最終投与後30日以内に生じた有害事象
LOCF:最終評価スコア外挿法

安全性(96週、SAS)

安全性(96週、SAS)

試験薬に関連する重篤な有害事象:
白内障2例(2週幅調節群、4週幅調節群 各1例)、脳血管発作1例(4週幅調節群)
試験薬に関連する投与中止に至った有害事象:
蕁麻疹1例(4週幅調節群)
試験薬に関連する死亡:
本試験において試験薬に関連する死亡は報告されなかった

ALTAIR試験 社内資料

*:無作為割り付け前脱落の理由は「医師の判断」(n=1)、「通院困難」(n=1)、「試験実施計画書違反」(n=2)、「患者による同意の撤回」(n=3)。
†:いずれかの群で確認された眼に関連するTEAE≧2%
‡:いずれかの群で確認された全身性のTEAE≧3%
∮:2例で3件報告された。
TEAE:Treatment-emergent adverse event
APTC:Antiplatelet Trialists’ Collaboration
有害事象の報告にはMedDRA version 19.1が用いられた。

Ohji M et al. Adv Ther. 2020; 37: 1173-1187.

滲出性変化と視力予後の関連性から考える個別化医療

最近では、滲出性の変化を網膜厚ではなく、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、網膜色素上皮(RPE)下液の3種類の網膜滲出液(フルイド)に分けて評価するのが一般的になっている(図5)8)。IRFは網膜浮腫、SRFは漿液性網膜剥離、そしてRPE下液は網膜色素上皮剥離(PED)の病態にそれぞれ関与している。

図5 網膜滲出液の種類

図5 網膜滲出液の種類

Schmidt-Erfurth U, et al. Prog Retin Eye Res. 2016; 50: 1-24.

VIEW試験の事後解析9)では、ベースラインにおける網膜内浮腫(IRC)、SRF、PEDの3種類の滲出性変化の有無別に視力結果との関連性が検討されており、IRCはベースライン時および最終視力不良と関連していたが、SRFの残存は視力に大きな影響を及ぼしていなかったという結果が示されている。CATT試験10)においても滲出性変化の種類別の視力結果が検討されており、また、オーストラリアで行われたFLUID試験11)では200μm以下の中心窩下SRFを許容して投与間隔を調節するT&Eレジメンが検討されており、最近では滲出性変化の種類を考慮した治療が注目されている。これらの複数の検討から、IRFおよびSRFも出来るだけ消退させることが望ましいが、抗VEGF治療を行ってもなお残存するようなSRFの場合には、ある程度許容しても視力への影響が少ない可能性がある。実際には視力を経過観察しながら、それぞれの患者においてどの程度までSRFを消退させていくべきなのかを考え、治療していくこととなる。今後さらに研究を進め、どのような症例であれば、またどの程度ならSRFの残存が許容できるのかについて研究で明らかにしていく必要がある。

文献

1) Wong TY, et al. Am J Ophthalmol. 2019; 204: 80-89.
2) Rofagha S, et al. Ophthalmology. 2013; 120(11): 2292-2299.
3) Kuroda Y, et al. Ophthalmology. 2015; 122: 2303-2310.
4) Grunwald JE, et al. Ophthalmology. 2014; 121: 150-161.
5) Chakravarthy U, et al. Lancet. 2013; 382: 1258-1267.
6) Ohnaka M, et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2017; 255: 657-664.
7) Ohji M, et al. Adv Ther. 2020; 37: 1173-1187.
8) Schmidt-Erfurth U, et al. Prog Retin Eye Res. 2016; 50: 1-24.
9) Waldstein SM, et al. Ophthalmology. 2016; 123: 1521-1529.
10) Sharma S, et al. Ophthalmology. 2016 ; 123(4): 865-875.
11) Guymer RH, et al. Ophthalmology 2019; 126: 723-734.