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DMEとは

糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫

糖尿病網膜症は、糖尿病において高血糖状態が続くことによって起こる三大合併症の1つです。糖尿病網膜症のほかに、角膜障害(15~17%程度)、ぶどう膜炎(虹彩炎:1~6%)、白内障(非糖尿病患者と比較して2~10倍)、血管新生緑内障(0.25~20%)、視神経症といった眼合併症が引き起こされます。
糖尿病黄斑浮腫(DME;Diabetic Macular Edema)は糖尿病網膜症に合併しうる病態であり、毛細血管瘤や網膜毛細血管の透過性亢進により血漿成分が網膜内に貯留することで、黄斑が異常をきたす病態です。糖尿病網膜症の病期に関係なく発症し、視力低下に直結する可能性があります。

糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫

ヴィジュアル糖尿病臨床のすべて:糖尿病網膜症のすべて. 荒木 栄一編, 中山書店, 2012, p18-20

糖尿病黄斑浮腫とは

DMEは、糖尿病網膜症に伴う黄斑部網膜の肥厚であり、糖尿病による網膜血管障害で、黄斑の細胞間間質に体液が貯留する状態を指します。

糖尿病黄斑浮腫とは

糖尿病黄斑浮腫の疫学

久山町研究および舟形町研究において、日本人糖尿病網膜症の有病率は15.0~23.0%でした1)。DMEは糖尿病網膜症の20%に合併するという報告2)に基づき算出すると、日本人DMEの有病率は3.0~4.6%と推定されます。
DME有病率のデータはあまり多くありませんが、DMEは米国人糖尿病患者の9.0%に合併し、その内訳は白人2.7%、中国系8.9%、黒人11.1%、ヒスパニック系10.7%であったことが報告されています3)
ですから、日本人糖尿病患者のDME有病率は白人と同程度であると推測できます。

1)久山町研究(2007年)、舟形町研究(2000~2002年)より
2)中野 早紀子,第114回日本眼科学会総会 2010:135
3)Wong TY et al. Am J Ophthalmol 2006; 141: 446-455

糖尿病網膜症と黄斑浮腫の発症機序

黄斑浮腫の発症機序は、以下のように起こると考えられています。

 

①糖尿病によって引き起こされる慢性的な高血糖に伴う代謝応答(代謝異常)による活性酸素、ポリオール代謝経路の亢進、PKCβの活性化、AGE(終末糖化産物)の蓄積などによる刺激が生じる。


②VEGFを含むさまざまな炎症系サイトカインの上昇と、それに伴う慢性的な無症候性炎症が生じる。


③慢性的な炎症やそれに伴う酸化ストレスの亢進の状態が継続的に続くと、血管内皮細胞やペリサイトを傷害することで細小血管障害が起こり、その結果として虚血が生じる。この虚血が引き金となって、やはりVEGFが産生され、眼内のVEGFが上昇する。


④VEGFは、血管新生を促進させるが、同時に細胞内皮細胞のタイトジャンクションの離開を引き起こし、内皮細胞の窓(fenestrate)構造を進展させ、内側血液網膜関門の破綻へと導く。


⑤最終的に、この内側血液網膜関門の破綻が、血管透過性および血漿成分の漏出を増加させ、黄斑の細胞間間質に体液が貯留することで、黄斑浮腫が起こる。