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ATEのリスク因子を有するDME患者さんに向けたアイリーアによる治療

nAMD

抗VEGF薬により全身的にVEGFが阻害されることで、潜在的な動脈血栓塞栓事象(ATE)の発現につながる可能性が考えられます

抗VEGF薬によるATEの発現機序

VEGFシグナリングの阻害により、抗血栓作用(血小板機能抑制及び血管拡張作用)が知られている一酸化窒素(NO)及びプロスタサイクリン(PGI2)産生が抑制されると考えられます。したがって、NO及びPGI2の産生抑制はATEを引き起こしやすくなる可能性があります1、2)

VEGFの阻害はエリスロポエチン(赤血球産生促進ホルモン)の過剰産生を引き起こし、ヘマトクリットの増加及び血液粘性を高めることにより、ATEの発現に寄与する可能性が考えられます3、4)

NO:nitric oxide PGI:prostaglandin(prostacyclin)

1)Horowitz JR, et al.: Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1997; 17: 2793-2800.
2)Hood JD, et al.: Am J Physiol. 1998; 274: H1054-H1058.
3)Spivak JL: Blood. 2002; 100: 4272-4290.
4)Tam BY, et al.: Nat Med. 2006; 12: 793-800.

高齢・糖尿病(耐糖能異常)はATEのリスク因子であり、久山町研究において、加齢や耐糖能レベルの悪化によりATE発症率が上昇したと報告されています

ATEのリスク因子

ATEのリスク因子

リスク①高齢

リスク①高齢:久山町研究における年齢群別の脳梗塞、脳出血、くも膜下出血及び冠動脈疾患の発現頻度(10万人・年あたりの発現例数)3)

リスク②糖尿病(耐糖能異常)

リスク②糖尿病(耐糖能異常):久山町研究における耐糖能別の脳心血管イベント発症率4)

久山町第3集団2,421人, 40~79歳, 1988~2002年, 年齢調整
(Doi Y, et al.: Stroke. 2010; 41: 203-209. より引用改変)

1)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会:脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019対応].
2)日本循環器学会 2011年度合同研究班:虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)
3)Kubo M, et al.: Stroke. 2003; 34: 2349-2354.
4)向井直子, 他:福岡医誌. 2011; 102: 175-184.

アイリーア投与患者には、高齢者や糖尿病などを有する患者が含まれており、市販後の長期安全性が検討されています(nAMD:最長3年、DME:最長2年)

PMS対象患者の年齢分布(nAMD)1)

PMS対象患者の年齢分布(nAMD)

PMS対象患者の年齢分布(DME)2)

PMS対象患者の年齢分布(DME)

EDC:electronic data capture

1)社内資料:アイリーアⓇ硝子体内注射液40mg/mL 特定使用成績調査(PMS)の最終報告-中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)-
2)社内資料:アイリーアⓇ硝子体内注射液40mg/mL 特定使用成績調査(PMS)の最終報告-糖尿病黄斑浮腫(DME)-
3)厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループ:日眼会誌. 2008; 112: 1076-1084.


DME

DRCR.net Protocol T試験(海外データ)

The Diabetic Retinopathy Clinical Research Network: N Engl J Med. 2015; 372: 1193-1203.(文献1)
Wells JA, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 1351-1359.(文献2)

注意:本試験のラニビズマブの用量は0.3mgですが、日本でのラニビズマブの糖尿病黄斑浮腫への適応は0.5mgです。ベバシズマブは糖尿病黄斑浮腫に対して試験実施国(米国)および日本で未承認であるためベバシズマブ群の結果を削除しています。

試験概要

目的

中心窩に及ぶ糖尿病黄斑浮腫(DME)を有する患者を対象に、(1)アフリベルセプト硝子体内投与、(2)ベバシズマブ硝子体内投与、(3)ラニビズマブ硝子体内投与の有効性および安全性を比較検討すること

実施国/施設数

米国/89施設

試験デザイン

多施設共同無作為化比較試験

試験対象

中心窩に及ぶDMEを有する患者660例660眼※1

選択基準(抜粋)

[試験対象者]

  • 18歳以上
  • 1型あるいは2型糖尿病と診断されている

[試験対象眼]

  • 最高矯正視力文字数(E-ETDRS)が78~24(近似スネレン等価視力20/32~20/320)
  • 中心窩に及ぶDMEによる明らかな網膜肥厚を認める
  • OCTによる中心サブフィールド網膜厚(CST)が250μm以上※2
主要評価項目

1年目における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量(ベースラインの最高矯正視力で調整)

副次評価項目

1年目における試験実施計画書に従った硝子体内投与回数 など

その他の評価項目

2年目における試験実施計画書に従った硝子体内投与回数 など

主な安全性の主な評価項目

投与手技に関連する※3、薬剤に関連する(眼※4、全身性※5)有害事象 など

解析計画
  • 主要評価項目については、ベースライン視力を調整した共分散分析(ANCOVA)により群間比較を行う。その際、Hochberg法により多重性の調整を行う。欠測値については多重代入法を用いて補完する。平均値から3SD以上の外れ値は除外する。
  • 副次評価項目については、評価項目に応じ、ベースライン因子を調整したANCOVAなど適切な手法を用いて検討する。
  • 安全性評価項目については、片眼のみ、あるいは両眼とも投与を受けた患者群ごとの全身性有害事象の発現状況についても検討する。
  • 事前に規定した解析として、主要評価項目および副次評価項目(1年目におけるCSTのベースラインからの変化量)について、ベースライン視力(<20/40 vs. ≧20/40)による層別解析を行うとともに交互作用についても検討する。
  • 2年目については1年目の統計解析手法を踏襲する。
利益相反

本試験で用いられた薬剤(アフリベルセプト)はRegeneron Pharmaceuticals社より提供された。著者にRegeneron Pharmaceuticals社、Bayer HealthCare Pharmaceuticals社から経済的支援、謝礼を受領している者(文献1、2)、 Regeneron Pharmaceuticals社の株式所有者(文献2)が含まれる。
なお、本試験の資金提供組織はNational Institutes of Health(NIH)であり、プロトコルの作成、実施、データの管理についてはDRCR.netが主体である。

※1:試験対象眼は各患者片眼のみとする
※2:機種/性別ごとに規定  1.<250μm:Zeiss Stratus  2.<320μm(男性)、<305μm(女性):Heidelberg Spectralis  3.<305μm(男性)、<290μm(女性):Zeiss Cirrus
※3:眼内炎、牽引性網膜剥離、裂孔原性網膜剥離、網膜裂孔、白内障、眼内出血、眼圧上昇
※4:炎症、牽引性網膜剥離、牽引性網膜剥離の悪化・黄斑部への進行
※5:高血圧、腎事象、胃・消化管事象、APTC定義に基づく動脈血栓塞栓事象

日本におけるアイリーアの糖尿病黄斑浮腫に対する用法及び用量:
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として2mg(0.05mL)を1ヵ月ごとに1回、連続5回硝子体内投与する。その後は、通常、2ヵ月ごとに1回、硝子体内投与する。
なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、1ヵ月以上あけること。

日本におけるラニビズマブの糖尿病黄斑浮腫に対する用法及び用量:
ラニビズマブ(遺伝子組換え)として1回あたり0.5mg(0.05mL)を硝子体内投与する。投与間隔は、1ヵ月以上あけること。

日本におけるベバシズマブの糖尿病黄斑浮腫への適応は未承認です。

アフリベルセプト投与群の糖尿病罹病期間(中央値)は15年でした

患者背景

患者背景

中央値(25%:第1四分位数、75%:第3四分位数)
*アフリベルセプト投与群に5例、ラニビズマブ投与群に1例のデータ欠測例あり。

The Diabetic Retinopathy Clinical Research Network: N Engl J Med. 2015; 372: 1193-1203. ※承認の範囲内の症例群のみに限定し、一部改変
Copyright© 2015 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission.

アフリベルセプト投与群におけるアフリベルセプトの投与回数は、1年目が9回、2年目が5回、2年間の累積で15回でした

抗VEGF薬による治療回数(1年目:副次評価項目、2年目:その他の評価項目)

抗VEGF薬による治療回数(1年目:副次評価項目、2年目:その他の評価項目)

中央値(25%:第1四分位数、75%:第3四分位数)
全体比較(Kruskal-Wallis Test)においてp<0.05の場合に、多重性を調整した(全体比較と対比較のうちp値が大きい方を採用)対比較(Wilcoxon Rank Sum Test)を行った。

* 全体比較:p=0.045、対比較:アフリベルセプト vs ラニビズマブ:p=0.19
** 全体比較:p=0.32
*** 全体比較:p=0.08
※全体比較のp値はベバシズマブ1.25mg投与群を含めて解析した結果を示す。

The Diabetic Retinopathy Clinical Research Network: N Engl J Med. 2015; 372: 1193-1203より作表
Wells JA, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 1351-1359 ※承認の範囲内の症例群のみに限定し、一部改変

アフリベルセプト投与群におけるベースラインから52週後の最高矯正視力文字数の変化量は+13.3文字であり、ラニビズマブ投与群の+11.2文字に比べて有意差が認められました

※ベースライン視力と治療群との間に有意な交互作用が認められました

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量の推移(52週:主要評価項目)

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量の推移(52週:主要評価項目)

The Diabetic Retinopathy Clinical Research Network: N Engl J Med. 2015; 372: 1193-1203. ※承認の範囲内の症例群のみに限定し、一部改変
Copyright© 2015 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission.

ベースライン視力20/50以下の患者集団では、アフリベルセプト投与群における52週後の最高矯正視力文字数の変化量は+18.9文字であり、ラニビズマブ投与群の+14.2文字に比べて有意差が認められました

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量の推移(層別解析:ベースライン視力別)

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量の推移(層別解析:ベースライン視力別)

The Diabetic Retinopathy Clinical Research Network: N Engl J Med. 2015; 372: 1193-1203. ※承認の範囲内の症例群のみに限定し、一部改変
Copyright© 2015 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission.

アフリベルセプト投与群における試験眼に発現した眼の主な有害事象は、霧視24.1%、硝子体浮遊物18.3%、結膜出血15.2%などが認められました

試験眼に発現した眼の主な有害事象†(2年間)

  • アフリベルセプト投与群224例中、霧視54例(24.1%)、硝子体浮遊物41例(18.3%)、結膜出血34例(15.2%)、白内障28例(12.5%)、眼痛25例(11.2%)、視力低下22例(9.8%)、眼乾燥20例(8.9%)、嚢下白内障17例(7.6%)、眼刺激16例(7.1%)、流涙増加および硝子体出血 各15例(6.7%)、視力障害12例(5.4%)であった。
  • ラニビズマブ投与群218例中、霧視50例(22.9%)、硝子体浮遊物49例(22.5%)、結膜出血26例(11.9%)、眼痛23例(10.6%)、視力低下22例(10.1%)、眼乾燥20例(9.2%)、眼そう痒症16例(7.3%)、眼刺激15例(6.9%)、白内障13例(6.0%)、流涙増加および眼充血 各11例(5.0%)であった。

全身性の主な有害事象†(2年間)

  • アフリベルセプト投与群224例中、高血圧39例(17.4%)、鼻咽頭炎39例(17.4%)、咳嗽22例(9.8%)、貧血、頭痛および副鼻腔炎 各20例(8.9%)、嘔吐および尿路感染 各17例(7.6%)、インフルエンザ16例(7.1%)、コントロール不良の糖尿病、高コレステロール血症および上気道感染 各15例(6.7%)、胃食道逆流性疾患、季節性アレルギーおよび慢性腎不全 各14例(6.3%)、低血糖、背部痛および浮動性めまい 各13例(5.8%)、悪心、転倒、腎不全、気管支炎および蜂巣炎 各12例(5.4%)であった。
  • ラニビズマブ投与群218例中、高血圧44例(20.2%)、鼻咽頭炎29例(13.3%)、インフルエンザおよび頭痛 各20例(9.2%)、上気道感染19例(8.7%)、肺炎および副鼻腔炎 各18例(8.3%)、背部痛17例(7.8%)、貧血15例(6.9%)、コントロール不良の糖尿病、浮動性めまいおよび咳嗽 各14例(6.4%)、下痢、ウイルス性胃腸炎および悪心 各13例(6.0%)、うっ血性心不全、ビタミンD欠乏、腎不全、尿路感染および蜂巣炎 各12例(5.5%)、低血糖、末梢性浮腫、季節性アレルギー、転倒、脱水、関節痛および気管支炎 各11例(5.0%)であった。

(ICH 国際医薬用語集(MedDRA)のコード化を用いたメディカルモニターに基づく事象)
†:発現率5.0%以上とする

Wells JA, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 1351-1359. ※承認の範囲内の症例群のみに限定し、一部改変

注目すべき全身性の有害事象(事前に規定された安全性評価項目、2年間)

注目すべき全身性の有害事象(事前に規定された安全性評価項目、2年間)

¶:ICH 国際医薬用語集(MedDRA)の器官別大分類の胃腸障害の事象を含む。
#:MedDRAの器官別大分類の内因性腎障害を示す腎および尿路障害事象のサブセットに加えて、他の器官別大分類の血中クレアチニン上昇もしくは異常または腎移植を含む。

Wells JA, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 1351-1359. ※承認の範囲内の症例群のみに限定し、一部改変