アイリーアは、視力改善効果が期待でき、眼科用に開発された、VEGFとの新たな結合メカニズムを持つ、病的近視における脈絡膜新生血管治療薬です
アイリーアは、新たな構造とVEGFとの結合メカニズムを有します。
VEGF-Aとの結合親和性(in vitro)1)、眼内における抗VEGF活性の持続性(サル、ウサギ)を有し2)、その他のVEGFファミリー(VEGF-B、PlGF)とも結合します1)。
1)Papadopoulos N, et al.: Angiogenesis 2012; 15: 171-185.
(利益相反:本論文の著者は全てRegeneronの社員である)
2)Stewart MW, et al.: Br J Ophthalmol 2008; 92: 667-668.
疾患活動性に基づくアイリーア投与により、24週時点でアイリーア投与群では平均+12.1文字変化しました。
48週時点には、アイリーア投与群では50.0%の患者で15文字以上改善し、全体では平均+13.5文字変化しましたが、24週遅れてアイリーア投与が開始された偽注射群では平均+3.9文字の変化でした。
48週までのアイリーア投与群のアイリーア投与回数は、58.9%の患者で3回以下でした。
(MYRROR試験)
重大な副作用として、眼障害(眼内炎、眼圧上昇、硝子体はく離、外傷性白内障、網膜出血、網膜色素上皮裂孔、硝子体出血、網膜はく離、網膜裂孔、網膜色素上皮はく離)、脳卒中、主な副作用として結膜出血、眼痛などがあらわれることがあります。
添付文書の「11.副作用」および「17.臨床成績」の安全性の結果をご参照ください。
アフリベルセプトの構造
監修:石田 晋 先生 (北海道大学 大学院医学研究科 眼科学分野)
アフリベルセプトは、VEGFR-1およびVEGFR-2の細胞外ドメインとヒトIgG1のFcドメインからなる、遺伝子組換え融合糖蛋白質です。
新たな結合メカニズムを有し、VEGF-A、PlGFおよびVEGF-Bと1:1で結合します。
アフリベルセプトの作用機序
アフリベルセプトはVEGF-A、PlGFおよびVEGF-Bと結合することで、VEGF受容体を介した血管新生や血管透過性亢進、炎症反応を抑制すると考えられます。
VEGF(vascular endothelial growth factor):血管内皮増殖因子、PlGF(placental growth factor):胎盤成長因子、VEGFR-1(vascular endothelial growth factor receptor-1):VEGF受容体-1、VEGFR-2(vascular endothelial growth factor receptor-2):VEGF受容体-2、RPE(retinal pigment epithelium):網膜色素上皮
1)Dixon JA, et al.: Expert Opin Investig Drugs 2009; 18: 1573-1580.
利益相反:本論文の著者にRegeneronの治験担当医師が含まれる。
2)Clauss M, et al.: J Biol Chem 1996; 271: 17629-17634.
3)Rakic JM, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci 2003; 44: 3186-3193.
4)Boyd SR, et al.: Arch Ophthalmol 2002; 120: 1644-1650.
5)Otani A, et al.: Microvasc Res 2002; 64: 162-169.
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼および研究費を受領した者が含まれる。
6)Miyamoto N, et al.: Ophthalmic Res 2008; 40: 203-207.
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼を受領した者が含まれる。
7)Zhang F, et al.: Proc Natl Acad Sci USA 2009; 106: 6152-6157.
バイエル薬品社内資料[日本人を含む
第Ⅲ相国際共同試験:MYRROR試験]承認時評価資料
試験概要
【実施地域】日本、韓国、台湾、香港、シンガポールの5ヵ国・地域、20施設
mCNVを有する患者を対象に、アイリーアの有効性について偽注射に対する優越性を検証するとともに、安全性および忍容性についても検討する
mCNVを有する患者122例(うち日本人:90例)
[主な選択基準]
[主な除外基準]
無作為化二重遮蔽偽注射対照比較試験
対象患者を、アイリーア群および偽注射群の2群に無作為に割り付けた。
アイリーア群は、アイリーア2mgを単回投与後、44週目まで4週ごとに再投与基準に従いアイリーア2mgの再投与または偽注射を行った。偽注射群は、偽注射を単回投与後、20週目まで4週ごとに偽注射を繰り返し、24週目にアイリーア2mgを単回投与後、44週目まで4週ごとに再投与基準に従いアイリーア2mgの再投与または偽注射を行った。
[再投与基準]
以下の基準のうち1項目以上を満たす:
主要評価項目:
24週目における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量
副次評価項目:
24週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合
探索的評価項目:
24週目および48週目までの各観察時点における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量
24週目および48週目までの各観察時点における5、10または15文字以上の視力改善または視力低下がみられた患者の割合
24週目および48週目におけるCRTのベースラインからの変化量
24週目および48週目におけるCNV病変サイズのベースラインからの変化量
24週目および48週目におけるFAによる蛍光漏出量のベースラインからの変化量
24週目および48週目におけるNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量 など
有害事象、副作用、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡、APTC定義による動脈血栓塞栓事象 など
検証的な解析
主要評価項目(FAS):アイリーア投与群の偽注射群に対する優越性の検証
副次評価項目(FAS):同上。ただし主要評価項目で優越性が検証された場合に限り実施
探索的な解析
探索的評価項目(FAS)
部分集団解析:日本人の部分集団解析 など
mCNV(myopic choroidal neovascularization):病的近視における脈絡膜新生血管
FAS(full analysis set):最大の解析対象集団
FA(fluorescein angiography):フルオレセイン蛍光眼底造影
NEI VFQ-25(National Eye Institute 25-item Visual Function Questionnaire):米国国立眼病研究所の25項目からなる視覚機能についてのアンケート
●偽注射:硝子体内注射と同じ処置を行うが、注射の代わりに針のない注射シリンジを局所麻酔下で眼球に押し付ける方法
病的近視における脈絡膜新生血管の用法及び用量
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回あたり2mg(0.05mL)を硝子体内投与する。投与間隔は、1ヵ月以上あけること。
24週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合は、アイリーア群では38.9%、偽注射群では9.7%であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が検証されました
最高矯正視力文字数の変化量の推移(LOCF、FAS)
※1 投与群および国を固定効果、最高矯正視力文字数のベースライン値を共変量としたANCOVAモデル
※2 アイリーア群一偽注射群
24週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合は、アイリーア群では38.9%、偽注射群では9.7%であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が検証されました
15文字以上の視力改善がみられた患者の割合(LOCF、FAS)
※1 24週目以降アイリーア投与
※2 国で調整した両側CMH検定
※3 アイリーア群一偽注射群(国を層としたCMH型の重みを用いて調整した)
中心網膜厚(CRT)の変化量の推移(LOCF、FAS)
※1 投与群および国を固定効果、CRTのベースライン値を共変量としたANCOVAモデル
※2 アイリーア群一偽注射群
CNV病変サイズの変化量(LOCF、FAS)
※1 24週目以降アイリーア投与
※2 投与群および国を固定効果、CNV病変サイズのベースライン値を共変量としたANCOVAモデル
※3 アイリーア群一偽注射群
DA(Disc Area):乳頭面積
アイリーアの投与回数の内訳(FAS)
MYRROR試験(48週間)において、すべての有害事象はアイリーア群で91例中64例(70.3%)、偽注射群で31例中18例(58.1%)に認められました。主な有害事象はアイリーア群で鼻咽頭炎17例(18.7%)、結膜出血10例(11.0%)、偽注射群で点状角膜炎4例(12.9%)などでした。副作用※1は、アイリーアを投与された116例※2中25例(21.6%)に認められました。主な副作用は、結膜出血10例(8.6%)、点状角膜炎7例(6.0%)、眼痛6例(5.2%)などでした。試験薬に関連する重篤な有害事象は、アイリーア群で黄斑円孔が1例に認められました。試験薬に関連する投与中止に至った有害事象および試験薬に関連する死亡は認められませんでした。
※1 投与手技に起因する有害事象を含む
※2 アイリーア群91例、偽注射群25例
発現例数(発現率%)
a)0~20週目は4週ごとに偽注射を行い、24週目にアイリーアを単回投与後、28~44週目は4週ごとにアイリーア投与または偽注射を行った
b)すべての有害事象のうち、APTC(Antiplatelet Trialists’ Collaboration)定義により判定された動脈血栓塞栓事象
6.用法及び用量
<病的近視における脈絡膜新生血管>
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回あたり2mg(0.05mL)を硝子体内投与する。投与間隔は、1ヵ月以上あけること。
7.用法及び用量に関連する注意
<効能共通>
7.1
両眼に治療対象となる病変がある場合は、両眼同時治療の有益性と危険性を慎重に評価した上で本剤を投与すること。なお、初回治療における両眼同日投与は避け、片眼での安全性を十分に評価した上で対側眼の治療を行うこと。
<病的近視における脈絡膜新生血管>
7.4
定期的に視力等を測定し、その結果及び患者の状態を考慮し、本剤投与の要否を判断すること。
7.5
疾患の活動性を示唆する所見(視力、形態学的所見等)が認められた場合には投与することが望ましい。
アイリーアの用法について:例
監修:大野 京子 先生 (東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 眼科学分野)
単純型黄斑部出血
A:眼底では灰色の色素沈着を伴う線維血管組織がみられる(矢印)。
B:FA蛍光眼底造影では、色素漏出がみられる(矢印)。
C:OCTでは網膜下の隆起病巣としてみられる。本症例では周囲網膜に浮腫などの滲出性変化はない。
A:黄斑部に円形の出血斑がみられる(矢印)。出血内に線維血管膜を示唆する灰白色の組織はみられない。出血の周囲にlacquer crackがみられる。
B:FA蛍光眼底造影では、出血によるブロックの低蛍光がみられる(矢印)。
C:OCTでは網膜下の隆起病巣としてみられ、OCTのみからでは近視性CNVとの鑑別はむずかしい。
大野 京子:あたらしい眼科 2012; 29(9): 1209-1215
利益相反:本論文の著者はBayerより謝礼および研究費を受領している。
滲出型AMDにおけるCNVとの比較
RPE(retinal pigment epithelium):網膜色素上皮
*:日本では男性に多い
Neelam K et al.: Prog Retin Eye Res 2012; 31(5): 495-525
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼および研究費を受領したものが含まれる。
MYRROR試験における再投与基準
※病的近視におけるCNVは滲出型AMDと比べて活動性が低いため、網膜下液や網膜浮腫などの
滲出性変化は軽微であることが多く、網膜色素上皮剝離もみられないことが多い。
活動性評価のポイント
<病的近視におけるCNVの活動性チェックポイント>
1):ほとんどのmCNVはType2であり、網膜色素上皮剥離は認められない。
2):多量の網膜下液は通常認めない。
3):①OCT-Aでは、血流を伴う血管が瘢痕期および萎縮期においても可視化される。
(瘢痕期および萎縮期では、FAにおいて色素漏出を認めず、OCTにおいても滲出液を認めない。)
②血液の存在下でも、信号の遮蔽によって血流が検出されない場合がある。
(この場合にも、FAでは色素漏出を認めるケースがある。)
③したがって、OCT-A所見のみに基づく活動性評価には注意が必要である。
Ohno-Matsui K et al.: Prog Retin Eye Res 2018; 63:92-106を一部改変
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼および研究費などを受領したものが含まれる。